CONSULTANT DIARY川﨑依邦の日々

[2019/4/26]不満の爆発

4月26日(金)

逃げずに立ち向かえ― 事例A

 

(1) 不満の爆発

A社は車両台数20台の運送業者である。ここ2年間、昇給なしで頑張ってきた。それでもついに4月の給与改定での賃金カットに踏み切った。一律10%のカットである。すると労働組合が上部団体の分会として公然化した。賃金カットに対する反発である。分会員には乗務員20人の50%、10人が含まれていた。労働組合加入通知書が突き付けられたわけである。

「今般、貴社の従業員が○○支部に加入し、当組合に所属されましたのでここにご通知申し上げます。労働者が労働組合に加入することは法律によって保護されています。すなわち、憲法28条では、“勤労者の団結する権利および団体交渉、その他の団体行動をする権利はこれを保護する”さらに、労働組合法の第7条では“(1)労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入もしくはこれを結成しようとしたこと、もしくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもってその労働者を排除し、その他これに対して不利益な扱いをすること、または労働者が労働組合に加入せず、もしくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。(2)使用者が雇用する労働者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むこと。(3)労働者が労働組合を結成しもしくは運営することを支配し、もしくはこれに介入すること” ―を不当労働行為として禁止しています」

A社長はガクゼンとする。血の気が引く。「これがうわさに聞いていた組合か。乗務員の50%も分会に入るとは、何たることか」。さらに、労働組合加入通知書と一緒に、「夏季一時金要求書」と「分会要求書」および「団体交渉申入書」を渡された。

「団体交渉申入書」は5日後に団体交渉を開く旨、申し入れている。場所は○○支部の上部団体の組合事務所である。要求事項は「①分会に分会事務所と掲示板を貸与すること、②組合員に影響を与える問題(身分、賃金、労働条件などの変更)については、会社は事前に組合と協議すること、③会社は組合活動については就業時間内であってもこれを認め、平均賃金を保証すること」 ―とある。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月27日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/25] 引き継がれると信じて

4月25日(木)

生きつづける精神― 事例A

 

(1) 引き継がれると信じて

人材育成と営業開拓への取り組み強化を行動計画の柱に据えて、A社はチャレンジ行動を開始した。

A社の永続化へ向けてのチャレンジである。奇手妙手はない。人材育成と営業開拓の王道を行くのみ。

企業再生のプロセスは、経営理念をベースとする変革行動にある。その際、ないない尽くしを絶望することはない。むしろ、ないない尽くし、いわば、人もいない、金もない、夢もないほうが、紙一重のところで逆転する。ないからこそある。知恵がある。闘志がある。前向きの力がある。

失うことと獲得することは紙一重、生と死が隣合わせみたいなものである。「倒木更新」の自然のリズムは、企業生命のリズムにも相通じる。深い深い思いを伝えていくことだ。

言い換えれば、経営理念、A社では荷主第一、家庭平和、社会貢献ということになる。このコトバは生き続ける。日々を精一杯生きていく中で、必ず引き継がれていく。信ずることである。永続する志を、強く持つことである。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月26日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/24]困難こそチャンス

4月24日(水)

生きつづける精神― 事例A

 

(1)困難こそチャンス

A社には、後継人材がいない。このことが、かえって豊かなものに出会うチャンスとなるかも知れない。永続の可能性にチャレンジすることで、道は開けてくるかも知れない。「倒木更新」は死と生が、隣同士であることを示している。企業にとっての消滅と永続もしかり。隣合わせである。隣との隙間に、何があるのか。それは、意思である。一瞬、一瞬を積極的に生き続けて、チャレンジしていく意思である。あきらめや逃避があってはならない。

A社では、経営理念を確立して、経営スローガンを打ちたて、行動計画を作成した。

①人材育成への取り組み

現状:

乗務員が高齢化し、人件費が上昇している。番頭がいない。報告、連絡、相談の社内ルールがなく、会議もない。恒常的に、良質の乗務員不足に悩んでいる。

行動計画:

乗務員のやる気を促すために、表彰制度を確立することとした。表彰制度の中身は、無事故、燃料費の節約、高速代の節約、スピードを守る ―という、4項目と定めた。それぞれ10ポイントで、計40ポイント。事故ゼロで10ポイント、1件でも事故をすれば0ポイント。燃料費、高速代、スピードについては、それぞれ目標基準を設定して、達成率100%で10ポイント ―といった具合に設定した。期間は6ヶ月単位。1ポイント単価は2,000円。表彰制度の確立で、乗務員のやる気を引き出そうとした。

A社では、ここ3ヵ年、給料は上がっていない。凍結である。そこで、乗務員1人ひとりに働きかけて、自らの努力でポイントを稼げるようにしたわけである。

そして、乗務員ミーティングをすることとした。5人ずつの小集団を編成して、5班編成した。ミーティングのテーマは「5S」(整理、整頓、清潔、清掃、しつけ)。毎週土曜日を職場ミーティングの日とした。今までもミーティングをしたことはあったが、続かなかった。いつの間にかやめてしまう。

今回は5Sをテーマとし、毎週土曜日と定例化して行うこととした、1つのグループは月1回であるが、5班あるので、職場ミーティングは週1回となり、毎回、社長と奥さんが参加する。いろんな乗務員がいる。一筋縄ではいかない連中ばかり。続けていくことが大事である。

②営業開拓への取り組み

現状:

1社のメイン荷主が売り上げの80%を占めていて、従属している。いわば、1社専属形態に埋没している。

行動計画:

メイン荷主の比率を、80%から50%に下げることとする。そのために。メイン荷主の仕事は傭車化を進めていく。余った自車について、新規の仕事を獲得していく。傭車化の進展には、現行荷主の理解がいる。1台ずつ、じわじわと進めていくこととする。新規の仕事開拓には、社長が先頭に立つ。メイン荷主の物流担当者から、部品の調達先を紹介してもらう。納品代行への取り組みである。積み合わせ輸送への取り組みである。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月25日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/23]運命に抗する誓い

4月23日(火)

生きつづける精神― 事例A

 

(1)運命に抗する誓い

商圏である荷主は、運送業の代わりは幾らでもいる、と高をくくっている。会社の財産がない。これといって、確かなものがない。むしろ借金の重圧。働いても働いても、残るものは借金ばかりである。土地は借地、車もローン、事務所も賃貸、まさに行き詰まり。体力が財産で、その体力の衰えとともに、消えてなくなるしかないのか。

企業運営の目的をどこに定めるか。収益を確保することは当然である。もっと大事なのは、永続ということである。創業者がいて、2代、3代と続いても、いつしか消えてなくなるのが中小企業の一般的な必然であり、運命である。運命に抗して、永続するコツは何か。それは、“変革する志”を発揮することである。

「倒木更新」という言葉がある。朽ち果てた大木の幹の木肌に種子が根付いて、元の木から水分の供給を受けて、立派な成木として成長を遂げる、自然界の姿をいう。

北海道に生えているアカエゾマツの場合、老木の倒れた上に、「一列にアカエゾマツが育っている」と言う。種の特続である。企業の生命に置き換えてみると、企業を担う個体は消えていくが、精神は引き継がれていく ―ということである。精神とは、経営理念のことである。経営理念の確立によって、人が育つと言える。

創業50年にして、先行きに暗雲が色濃く立ち込めているA社。2代目夫婦は決意した。とにかく続けよう。わたしらの代で終わりでは、申し訳ない。企業の変革にチャレンジして、倒木更新を成し遂げよう。そこで経営理念を明確化し、人材育成の風土づくりに取り組むこととした。夫婦でじっくりと話し合った。

「お父さんは今まで、どんなつもりで経営をしていたの」

「それは、お得意先に尽くしたい ―ということかな。今まで、あらためて考えたことはないけれど“荷主第一”が根本かな。それより、お母さんはどんなつもりでわしに付いてきたのか」

「家業ですからね。付いていくしかなかったのよ。わたしらの代でつぶしたくない、という気持ちが強いわね。家業がつぶれたら夜逃げするしかないし、“家庭平和”のためにも頑張ってきたということよ」

「なるほど、家庭平和か。今まで、本当にありがとう。感謝しているよ。オヤジから引き継いだ運送業、この仕事は、社会の役に立っている。運送屋がいなければ、運ぶ人がいなくなる。社会の役に立っている。“社会貢献”しているわけだ」

夫婦でじっくりと話し合って、経営理念として3つの誓いを立てた。荷主第一、家庭平和、社会貢献 ―の3つである。そして“可能性にチャレンジしよう”とのスローガンを掲げた。ダメだダメだと思うよりも、生き抜くのだ ―との強い思いをもって“可能性にチャレンジすること”だと、姿勢をシャキッとさせた。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月24日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/22]二代目、壁にぶつかる

4月22日(月)

生きつづける精神― 事例A

 

(1)二代目、壁にぶつかる

A社は創業50年、2代目が社業を切り盛りしている。コツコツとした歩みである。

2代目は大学を出てすぐさま、オヤジの意向で家業の運送業の道に入る。オヤジはリヤカーを引っ張りながら徐々にトラックを所有していき、息子である2代目が入社した時には、7台という陣容であった。大学は出たけれど、汗まみれで働く。必死の日々。

10年も経つと、いつしか25台の陣容となる。ここからジグザグの日々。増えたり減ったりしながら、大体25台前後で推移して、かれこれ20年経つ。ここからが伸びない。原因は人である。人が育たないのである。

配車と事務関係は、2代目と奥さんの二人三脚である。他人はいない。乗務員が急に休んだりすると、2代目が走る。事務所では奥さん1人が留守番する。ここらぐらいが成長の限界。ところが、ふと気付くと、トップである自分も58歳、奥さんも58歳。これから会社をどうしていくか。後継すべき人材が、だれもいない。自らの年齢が深まるにつれて、会社もそれまでか。

2代目夫婦には、娘が2人いるのみ。娘婿はいずれも、固い職業のサラリーマンである。それとなく今でも誘いを掛けてはいるが、色よい返事はない。奥さんにしても、こんなしんどい仕事は、娘や娘婿には、心情として継いでほしくないと思っている。25台の車を動かしているので、事務所にはいつも、夜の9、10時まで明かりをつけて、奥さんが残っている。たまには社長も残っている。究極の少数精鋭体制である。それでもここ3、4年、収支はトントン。いわば、赤字スレスレである。

資金繰りは苦しい。車の支払いが、重圧となっている。社会保険料の支払いも滞りがちである。25人の乗務員のうち、60代が10人と、老齢化も進んでいる。会社の先行きには、暗雲が立ち込めている。人が育っていないのが、暗雲の根本にある。さて、どうするか。

こうした事例は、中小運送業にとっては、よくあることである。家業としての運送業。心と体を粉にして働いて、ふと気付くと、後継者がいない。先のことより、今日一日が大事で、日々必死になって時を重ねてこのざま。そろそろ60歳も近付くし、「楽をしたい」と思っても、ままならない。行くところまで行くしかない。行き着いた果てには、何があるのか。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月23日 | 投稿者: unityadmin