CONSULTANT DIARY川﨑依邦の日々

[2019/2/27]三重苦⇒力に変える

2月27日(水)

開拓力の発揮― 事例A

 

(1) 三重苦⇒力に変える

〝運ぶだけ〟では明日が見えない、という状況が、中小のトラック会社を包んで久しい。運賃が上がらない、人がいない、コストが上がる ―という三重苦に包まれている。先行きが暗いのである。いわば、トコトン、ギリギリの状況に追い詰められている。

A社のトップの経験が示唆する教訓とは何か。それはトコトン、ギリギリの状況で大変革が起きるということである。荷主に対する全面依存、全面従属という姿勢では、荷主への恨み、つらみがたまる一方 ―ということである。

打算の道は、物流という世界にしっかりと足を踏まえて、道なき道を切り開くフロンティア・スピリット、開拓力をもつことである。物流を取り巻く三重苦を、力に転化する。三重苦を力に変えていくことが、物流企業の生き残り、活性化の道である。

「必死になれば、何とかなるものですよ。あきらめないことです。勝負は九回裏、ツーアウトからですよ。何としてもやり抜く、という強い意志がトップにあれば、必ず道は開けますよ(A社トップ)」

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年02月28日 | 投稿者: unityadmin

[2019/2/26]追いつめられ目覚め

2月26日(火)

開拓力の発揮― 事例A

 

(1) 追いつめられ目覚め

運送会社の中には、受け身が高じて、ヤクザ的というか、保守的な気風になじんでしまうところもある。時には、「オマエの家にでも火をつけたろうか。車を燃やしてやろうか」などといった暴言を吐くものもいる。荷主に対する全面依存、全面従属のなせる業である。開拓力がポイントである。

開拓力とは、道を切り開く力の事である。

トコトンまで、ギリギリまで追い詰められないと、本当の開拓力は身に付かない。ダメになるか、よみがえるか、紙一重の場面で道を切り開くエネルギーが発揮される。

開拓力を発揮して、今では年商100億の物流会社をつくり上げたトップの言った言葉がある。

「創業当初からのモットーとして、荷主が求めるものについては、決して〝できない〟と言わないこと。いったんは、必ず挑戦して、どうしても採算に合わなければ、事情を荷主に説明すること。石油ショックのとき、一挙に仕事が減ってずらーっと車が余った時、必死になって荷主開拓に走り回ったこと。逆風というか、ピンチのときこそ、〝ナニクソ〟というエネルギーが湧く」

仕事が減ったときに、闘志を燃やして行けるかどうかが、開拓力の発揮の分かれ目である。

「石油ショックで、次々と車の台数が減っていきました。大手運送会社の下請けとして仕事をしていたので、景気がわるくなると、次々と車の台数を減らされていったのです。車庫が、中古トラックの展示場みたいになりました。ここで踏ん張りました。ナニクソの日々です」

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年02月27日 | 投稿者: unityadmin

[2019/2/25] 受け身姿勢で過ち

2月25日(月)

開拓力の発揮― 事例A

 

(1) 受け身姿勢で過ち

この事例から学ぶべきことは何か。それはA社の荷主に対する全面依存、全面従属という、受け身姿勢の過ちである。「荷物は、いつもある。荷物の量が少ないのは、荷主のせいである」。しかも開拓力のなさである。新しい物流会社に対する姿勢が示している。「手を引け」とは、ヤクザの言葉みたいではないか。縄張りを自分勝手に決めている。荷主のニーズは関係ない。自分の都合が優先である。A社の経営体質は受け身、従属である。ここが問題である。

新任の物流担当者に取引中止を通告されたA社トップ。目の前が真っ暗とはこのことだ。創業以来のピンチ、廃業が頭にチラつく。「今までこんなに尽くしてきたのに、何たる仕打ちか。鬼だ。この世には、神も仏もない」。荷主に対する恨みが、ひしひしと心を占める。

ヤケクソの日々。酒びたりが続く。通告されて1カ月がたったころ、いつものごとく深酔いして、フラフラと自宅に帰る。そこへ妻が出迎える。

「お父さん、今こそしっかりしてください。荷主がなくなったぐらい、何ですか。お父さんには家族もいるし、従業員も車も残っているではないですか」。きつい妻の一言である。

A社トップは全従業員を集めて、この間の事情を説明した。あと二カ月で荷主の仕事がなくなること、次の荷主の当てもないこと。このままでは、廃業の道しかないこと。そして宣言した。

「しかしわたしは、一から出直すこととした。創業のときもゼロからだ。この二カ月間で、必死に次の仕事を探す。荷物の良い悪いは言わないでほしい。荷物に良いも悪いもない。とにかくわたしに付いてきてほしい」

かくして、A社トップの荷物獲得活動が始まった。同業者にも、なりふり構わず頼みに行った。特定荷主の仕事をしていた経験を生かして、着荷主のところを一軒一軒訪問した。必死の日々。開拓力の発揮である。

「特定荷主におんぶにだっこで、ノホホンと生きてきたことがよく分かりました。運んでやっている、とのオゴリもありました。一つ一つの荷物を大切に扱う心が、いつの間にか枯れていたのです」

A社の乗務員にも、危機感が芽生えた。今までのような働きでは、荷主の満足は得られない。どうせなくなるからといって、投げやりになっては、荷主にすまない。心を込めて働こう。こうした気運が生じてきた。廃業のピンチにさらされて、前向きの一体感が生まれてきたのである。A社は、ピンチを脱することができた。何とか、当面の仕事を確保することができたのである。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年02月26日 | 投稿者: unityadmin

[2019/2/24]一転自由競争に

2月24日(日)

開拓力の発揮― 事例A

 

(1) 一転自由競争に

A社は物流企業として30年、特定荷主1社に仕えてきた。A社の車両数は20台、ほとんどを特定荷主1社に投入してきた。

特定荷主はここ3年ばかり、収益が低下してきている。お決まりのパターンで、運賃の削減に着手した。30年の長きにわたって取引きしてきたA社とは別に、ほかの物流会社に見積もりを依頼した。A社の現行運賃と比して30%ダウンの見積もりが、その物流会社から提出されてきた。A社のトップは内心、自信たっぷりであった。「特定荷主の物流サービス高度化の要求に、今まで小回りよく尽くしてきたのはわれわれだ。ほかの会社がわれわれと同じことができるわけがない」。いわば、高をくくっていた。

特定荷主の物流担当者は、迷った。運賃で言えば、文句なしに新たな物流会社である。しかしA社には、30年の取引の歴史がある。社員旅行、ゴルフ、酒食の席 ―と交流は深い。時間指定、緊急配達と、小回りも効かしてくれている。物流担当者は悩む。

特定荷主のトップが交代する。新トップはいわく、「過去は過去である。しがらみを捨てろ。われわれが生きていくのさえ、どうなるか分からない。物流業者も安くていいところがあったら、今までの業者を代えろ」。物流担当者は、A社のトップに悩みを打ち明けた。

「新たな物流会社が、30%ダウンの運賃見積もりを提出しています。うちのトップは、物流サービスのレベルが今以上に上がっていくのであれば、新しい物流会社に変更するよう、強く言っています。社長、どうしたらいいでしょうか」

A社のトップはすぐさま、新しい物流会社のトップに面会を申し込んだ。

「困りますねえ。運賃のダンピングは、われわれに死ねと言っているのと一緒ですよ。特定荷主からは手を引いて下さい。わたしどもは、30年も取引してきたのですよ。横からきてよその荷物を奪うようなことは、やめてください」

「自由競争の時代ですよ。見積もりしてほしいと申し出があったので、対応したまでのことです。荷物を出す、出さないを決めるのは、荷主ですよ。手を引くも何も、無茶なことを言わないでくださいよ」

「おたくとは同じトラック協会の会員で、いわば近所ではないですか。同業同士でダンピングはやめましょう」

A社と新しい物流会社は、特定荷主を間にして対立した。特定荷主の物流担当者は、変わったばかりのトップに呼ばれた。

「何を悩んでいるのか。われわれの会社も生きるか死ぬかの瀬戸際だ。今までのA社との取引きには、慣れ合いもあったはず。A社の乗務員は、どちらがお客か分からないほど、横柄な口をきいている。乗務員のレベルも、年々悪くなっているし、事故も増えてきている」。特定荷主は、トップの方針で、物流をA社から新しい物流会社に変更する ―とした。

ところが、A社のトップは納得しない。ついに特定荷主のトップに面会を申し込んだ。

「新しい物流会社に代えるということは、われわれに死ねということです。われわれをつぶすのですか。われわれをつぶすとしたら、責任を取ってください。どうしても新しい物流会社に代えるというなら、われわれのところの乗務員と車を引き取ってください」

さらにA社トップは、新しい物流会社のトップにも面会する。

「他人の荷物を横取りするのは許せない。手を引いてほしい。どうしても横取りするというのであれば、こちらにも考えがある。だてに30年も運送会社をやってきたわけではない。表も裏も知り尽くしている」

やけくそ戦法と言うべきか、A社のトップは特定荷主、新しい物流会社に対して、脅しと泣きを入れた。脅しとは、「つぶす気か、どうしてくれる」、泣きとは「助けてくれ」。

特定荷主の物流担当者が交代する。今までの前任者にはしがらみがあって、悩みに沈んで身動きが取れなくなったからだ。新任の物流担当者は決断する。

「物流会社を決める権限は、わが社です。わが社の方針は、新しい物流会社に代えるということです。今までの働きについては、感謝しています。3カ月後には、全面交代します。乗務員も車も、引き取れません」

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年02月25日 | 投稿者: unityadmin

[2019/2/23]経営者としての覚悟

2月23日(土)

物流企業生存の道― 事例A

 

(1) 経営者としての覚悟

「はたしてこれでよかったのだろうか。このまま30億で会社を買ってくれる人がいたら売りたい。そのほうが楽だ。スッキリする。借金を返した残りで余生を過ごしたい。給料はいらないから、相談役でおいてくれたらいうことはない」

A社長のつぶやきである。資金繰りの厳しさが言わせている言葉である。経営者の幸せとはなんだろうか。必死になっているA社長を見ていると、ふと「人生の幸福とは何か」と思ってしまう。苦労して苦労して大きくした会社に、ここにきてトコトン苦しめられる。このプロセスもまた経営者の生き様―というものであろう。

A社長いわく、「この間の生き残り策、賃金カットや経費圧縮、役員のリストラで、社員は私のことをどう思っているだろうか。今までは〝いいおやじ〟であったが、〝クソおやじ〟、〝鬼おやじ〟と思っているだろう。つらい―」。

夜眠れないA社長は深夜、社長室の椅子に座って目をつむる日もある。「このままだと首吊りか」。その反面、「なにくそ、会社をつぶしてなるものか」。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年02月24日 | 投稿者: unityadmin