CONSULTANT DIARY川﨑依邦の日々

[2019/4/24]困難こそチャンス

4月24日(水)

生きつづける精神― 事例A

 

(1)困難こそチャンス

A社には、後継人材がいない。このことが、かえって豊かなものに出会うチャンスとなるかも知れない。永続の可能性にチャレンジすることで、道は開けてくるかも知れない。「倒木更新」は死と生が、隣同士であることを示している。企業にとっての消滅と永続もしかり。隣合わせである。隣との隙間に、何があるのか。それは、意思である。一瞬、一瞬を積極的に生き続けて、チャレンジしていく意思である。あきらめや逃避があってはならない。

A社では、経営理念を確立して、経営スローガンを打ちたて、行動計画を作成した。

①人材育成への取り組み

現状:

乗務員が高齢化し、人件費が上昇している。番頭がいない。報告、連絡、相談の社内ルールがなく、会議もない。恒常的に、良質の乗務員不足に悩んでいる。

行動計画:

乗務員のやる気を促すために、表彰制度を確立することとした。表彰制度の中身は、無事故、燃料費の節約、高速代の節約、スピードを守る ―という、4項目と定めた。それぞれ10ポイントで、計40ポイント。事故ゼロで10ポイント、1件でも事故をすれば0ポイント。燃料費、高速代、スピードについては、それぞれ目標基準を設定して、達成率100%で10ポイント ―といった具合に設定した。期間は6ヶ月単位。1ポイント単価は2,000円。表彰制度の確立で、乗務員のやる気を引き出そうとした。

A社では、ここ3ヵ年、給料は上がっていない。凍結である。そこで、乗務員1人ひとりに働きかけて、自らの努力でポイントを稼げるようにしたわけである。

そして、乗務員ミーティングをすることとした。5人ずつの小集団を編成して、5班編成した。ミーティングのテーマは「5S」(整理、整頓、清潔、清掃、しつけ)。毎週土曜日を職場ミーティングの日とした。今までもミーティングをしたことはあったが、続かなかった。いつの間にかやめてしまう。

今回は5Sをテーマとし、毎週土曜日と定例化して行うこととした、1つのグループは月1回であるが、5班あるので、職場ミーティングは週1回となり、毎回、社長と奥さんが参加する。いろんな乗務員がいる。一筋縄ではいかない連中ばかり。続けていくことが大事である。

②営業開拓への取り組み

現状:

1社のメイン荷主が売り上げの80%を占めていて、従属している。いわば、1社専属形態に埋没している。

行動計画:

メイン荷主の比率を、80%から50%に下げることとする。そのために。メイン荷主の仕事は傭車化を進めていく。余った自車について、新規の仕事を獲得していく。傭車化の進展には、現行荷主の理解がいる。1台ずつ、じわじわと進めていくこととする。新規の仕事開拓には、社長が先頭に立つ。メイン荷主の物流担当者から、部品の調達先を紹介してもらう。納品代行への取り組みである。積み合わせ輸送への取り組みである。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月25日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/23]運命に抗する誓い

4月23日(火)

生きつづける精神― 事例A

 

(1)運命に抗する誓い

商圏である荷主は、運送業の代わりは幾らでもいる、と高をくくっている。会社の財産がない。これといって、確かなものがない。むしろ借金の重圧。働いても働いても、残るものは借金ばかりである。土地は借地、車もローン、事務所も賃貸、まさに行き詰まり。体力が財産で、その体力の衰えとともに、消えてなくなるしかないのか。

企業運営の目的をどこに定めるか。収益を確保することは当然である。もっと大事なのは、永続ということである。創業者がいて、2代、3代と続いても、いつしか消えてなくなるのが中小企業の一般的な必然であり、運命である。運命に抗して、永続するコツは何か。それは、“変革する志”を発揮することである。

「倒木更新」という言葉がある。朽ち果てた大木の幹の木肌に種子が根付いて、元の木から水分の供給を受けて、立派な成木として成長を遂げる、自然界の姿をいう。

北海道に生えているアカエゾマツの場合、老木の倒れた上に、「一列にアカエゾマツが育っている」と言う。種の特続である。企業の生命に置き換えてみると、企業を担う個体は消えていくが、精神は引き継がれていく ―ということである。精神とは、経営理念のことである。経営理念の確立によって、人が育つと言える。

創業50年にして、先行きに暗雲が色濃く立ち込めているA社。2代目夫婦は決意した。とにかく続けよう。わたしらの代で終わりでは、申し訳ない。企業の変革にチャレンジして、倒木更新を成し遂げよう。そこで経営理念を明確化し、人材育成の風土づくりに取り組むこととした。夫婦でじっくりと話し合った。

「お父さんは今まで、どんなつもりで経営をしていたの」

「それは、お得意先に尽くしたい ―ということかな。今まで、あらためて考えたことはないけれど“荷主第一”が根本かな。それより、お母さんはどんなつもりでわしに付いてきたのか」

「家業ですからね。付いていくしかなかったのよ。わたしらの代でつぶしたくない、という気持ちが強いわね。家業がつぶれたら夜逃げするしかないし、“家庭平和”のためにも頑張ってきたということよ」

「なるほど、家庭平和か。今まで、本当にありがとう。感謝しているよ。オヤジから引き継いだ運送業、この仕事は、社会の役に立っている。運送屋がいなければ、運ぶ人がいなくなる。社会の役に立っている。“社会貢献”しているわけだ」

夫婦でじっくりと話し合って、経営理念として3つの誓いを立てた。荷主第一、家庭平和、社会貢献 ―の3つである。そして“可能性にチャレンジしよう”とのスローガンを掲げた。ダメだダメだと思うよりも、生き抜くのだ ―との強い思いをもって“可能性にチャレンジすること”だと、姿勢をシャキッとさせた。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月24日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/22]二代目、壁にぶつかる

4月22日(月)

生きつづける精神― 事例A

 

(1)二代目、壁にぶつかる

A社は創業50年、2代目が社業を切り盛りしている。コツコツとした歩みである。

2代目は大学を出てすぐさま、オヤジの意向で家業の運送業の道に入る。オヤジはリヤカーを引っ張りながら徐々にトラックを所有していき、息子である2代目が入社した時には、7台という陣容であった。大学は出たけれど、汗まみれで働く。必死の日々。

10年も経つと、いつしか25台の陣容となる。ここからジグザグの日々。増えたり減ったりしながら、大体25台前後で推移して、かれこれ20年経つ。ここからが伸びない。原因は人である。人が育たないのである。

配車と事務関係は、2代目と奥さんの二人三脚である。他人はいない。乗務員が急に休んだりすると、2代目が走る。事務所では奥さん1人が留守番する。ここらぐらいが成長の限界。ところが、ふと気付くと、トップである自分も58歳、奥さんも58歳。これから会社をどうしていくか。後継すべき人材が、だれもいない。自らの年齢が深まるにつれて、会社もそれまでか。

2代目夫婦には、娘が2人いるのみ。娘婿はいずれも、固い職業のサラリーマンである。それとなく今でも誘いを掛けてはいるが、色よい返事はない。奥さんにしても、こんなしんどい仕事は、娘や娘婿には、心情として継いでほしくないと思っている。25台の車を動かしているので、事務所にはいつも、夜の9、10時まで明かりをつけて、奥さんが残っている。たまには社長も残っている。究極の少数精鋭体制である。それでもここ3、4年、収支はトントン。いわば、赤字スレスレである。

資金繰りは苦しい。車の支払いが、重圧となっている。社会保険料の支払いも滞りがちである。25人の乗務員のうち、60代が10人と、老齢化も進んでいる。会社の先行きには、暗雲が立ち込めている。人が育っていないのが、暗雲の根本にある。さて、どうするか。

こうした事例は、中小運送業にとっては、よくあることである。家業としての運送業。心と体を粉にして働いて、ふと気付くと、後継者がいない。先のことより、今日一日が大事で、日々必死になって時を重ねてこのざま。そろそろ60歳も近付くし、「楽をしたい」と思っても、ままならない。行くところまで行くしかない。行き着いた果てには、何があるのか。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月23日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/21]企業永続のポイント

4月21日(日)

後継者の育成― 事例A

 

(1)企業永続のポイント

後継者づくりは10年仕事とも言われる。1年やそこらの付け焼き刃では、間に合わない。少なくとも、10年単位で考えていかねばならない。

山づくりとよく似ている。山に植える木は、1年やそこらでは成長しない。どんな山にして、いつ伐採するか。目的意識をもって、後継者づくりをすることである。

A社長は70歳。しかし、元気である。朝はいつも7時には出社し、神棚に水を捧げ、1日の無事故を祈って手を合わせる。朝礼ではラジオ体操をし、社訓を唱和する。そして1日の注意事項を伝達する。そして、職場巡回をする。とくに5S ―「整理」「整頓」「清潔」「清掃」「しつけ」 ―にはやかましい。口をすっぱくして徹底する。

職場ごとに、月間スローガンを決めて、乗務員休憩室に大きく張り出し、その掲示板の前で、1人ひとりの乗務員をつかまえて、会話をする。生涯現役の実践である。生きている限りは戦い抜く ―ということである。

筆者は、A社長の姿に心打たれて、40歳の学者の息子に、跡を継ぐように説得した。家業は、継続してこそ、本当の家業である。

「そんなこと言われても、わたしは運送業のことは何にも分かりませんよ」

固辞である。しかし、話をしている間に、ほぐれてきた。

「そういえば小さい頃や、中学の時、トラックの荷台に乗せられて、親父と一緒に東京まで行ったことがあります。深夜の道を、猛スピードで駆け抜けていったことを思い出します。親父の背中を見て育ったわけですね。一度も、家業を継げとは言われたことはありません。好きな道に進め、と言ってくれました。わたしが国立大学に入学した時も、たいへんよろこんでくれました。父親には、心から感謝しています。でも、跡を継ぐということは、諦めてもらいたいですね。リーダーの中から後継者をつくればいいのですよ。そのように親父には伝言して下さい」

後継者づくりは、経営者にとって仕事の中の仕事である。いわゆる、代行者の育成である。自らの代行者づくりこそ、企業永続のポイントである。

明日は見えない。今日生きるのに精一杯。だからこそ、明日をしっかり見ていくことが今日の活力となる。明日の中に、後継づくりを芯にすえていくことだ。

バトンタッチが経営人生というものだ。バトンタッチを夢見て、日々を全力で生きるのだ。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月22日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/20]永続性も経営の目的

4月20日(土)

後継者の育成― 事例A

 

(1)永続性も経営の目的

中小企業の運命は、いつしかつぶれていくようになっているのかも知れない。「つぶれる」と言えば表現がキツいが、消えていく、溶けていく ―といったところだ。

日本国には、相続税がある。A社の場合は、会社内容がよくなればなるほど、株価が上がる。株を相続する学者の息子には、重い税金がのし掛かってくる。相続税を払うために、四苦八苦する。このプロセスで、企業が消えていくのかも知れない。経営の目的は、収益性、教育性、社会性、永続性 ―である。

①収益性

企業は、利潤なくしては罪悪である。ところが、物流企業の大半は、アップアップしている。もうける力なくして、企業とは言わない。

②教育性

企業活動のプロセスで、それに従事する者の人間性を向上させていくことが、企業経営の目的である。働く人の鬱が増えている。体調が悪くなる人もいる。こうしたことが企業経営の目的ではなく、ヒトとしてのレベル=人間性 ―を向上させていくことが目的である。

③社会性

人様の役に立つことが、社会性である。犯罪会社であってはならない。荷主の役に立つことで、社会性を獲得することができる。利潤を出すことで税金を納付する。このことも、立派な社会性である。

④永続性

“パッと咲いてパッと散る”桜の花も美しいが、企業の目的は、永続性にある。継続することである。永続性にチャレンジするのが、企業というものである。

A社は現状として、収益性、教育性、社会性はそれなりに具備している。しかし、永続性に赤ランプがともっている。赤ランプの原因は、人づくり、とりわけ後継者教育の不在にある。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月21日 | 投稿者: unityadmin