CONSULTANT DIARY川﨑依邦の日々

[2019/3/15]心開かせる気配り名人

3月15日(金)

トップのコミュニケーション― 事例A

 

(1) 心開かせる気配り名人

5人の幹部は必死である。A君、B君は独身なので、通常はコンビニ弁当が食事パターンである。「よく続きますね」と問うと、「仕事は趣味です。そう思って働いています。社長を裏切りたくないのです。社長に付いていくだけです」。A君、B君はお金の管理まで、トップに任せている。お金の管理とは、生活費を除いて、給料のすべてを託していることである。トップは預金通帳を保管している――というわけである。全身全霊での信頼関係である。カリスマ的としか言いようがない。

◎共感性

トップは優しい。よく声を掛ける。絶妙としか言いようがない。相手の気持ちを読み取る能力がすごい。気配り名人と言うべきか。A君、B君は独身なので、食事を心配して、よく一緒に食事をする。営業所のリーダーにもよく声をかける。とにかく、グルグル現場を回る。よく気が付く。ほんのちょっとしたことでも、ピンとくる。察しがいいのである。恐いけど優しい。1人ひとりが「社長は自分のことを気にかけてくれている」と心から思っている。

年末の12月は、とくに忙しくなる。A君、B君は家にすら帰れなくなる。文字通りの1日24時間の勤務が続く。社長は心からコミュニケーションをする。演技ではない。自分で熱いお茶を入れて1人ひとりに配る。「大丈夫か。1月になったら1杯飲もう」とか、「手伝うことがあったら、何でも言ってくれよ。何でも手伝うよ」とか、「これで元気だせ。マムシドリンクは体に効くぞ」とか……。

相手の心を開かせていく力がすごいとしか、言いようがない。

トップは勉強は好きではなかったが、中学校の先生が言ったことを心に刻んでる。それは創業して10年目、人の苦労の連続で「もうやめよう。もうやめよう」と思い悩んでいた時、中学校の先生に会いにいって、教えてもらった言葉である。

先生いわく。「いい先生というのは、子供にとって“頼りになるもの、信頼できるもの”―――というイメージを与えているよ。先生に対して、子供がそういった信頼というイメージを持つと、必ず安定感が生じ、自信を持ち心のゆとりを持って、伸び伸びしてくるものだよ。経営者も一緒ではないですか。子供に自信を持たせていくことが、先生の役割です。毎日毎日が大切ですよ。1つ成功すれば子供と一緒に喜び、失敗すれば励ましていくことです。そして、人間としての暖かさと人間としての深い知恵とか力とか、なくしてはなりません。そうすれば、子供は安心し切って学習し、自分の力を作り出し、自力を付け、自信を持っていくようになります」。

トップは中学校の先生の言葉から、共感性を学んだといえる。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年03月16日 | 投稿者: unityadmin

[2019/3/14]カリスマ的支配

3月14日(木)

トップのコミュニケーション― 事例A

 

(1) カリスマ的支配

リーダーの役割は、メンバー1人ひとりの能力を引き出し、やる気にさせていくところにある。

教育とはエデュケートということで、「引き出す」という意味がある。1人ひとりの内在する可能性を引き出し、やる気にさせて自信を持たせていくことである。

A社(社員数100人)は、成長している物流会社である。リーダーであるトップの力量がすごい。トップは中学卒で50歳。創業するまでは職を転々とし、一時はヤクザ渡世に身を染めたこともあるという。30歳で現在の事業を興した。奥さんとの2人3脚での出発である。トップの回りには5人の幹部がいる。5人の幹部全員、大卒ではない。独身者が3人いる。いずれも、トップとともに歩んできたメンバーである。

A君(40歳)は入社15年、独身である。実によく働く。会社の事業体制は、1年365日、24時間対応という物流サービス内容である。A君は午前1時出勤して、午後8時退社が、通常ベースである。「よく続きますね」と言うと、ニッコリしている。会社の中が人生そのままの生活の場となっている。

B君(42歳)も独身で、A君とペアを組んで仕事をしている。日曜日も交代して出勤している。年間稼働日数は330日、1日の平均労働時間は15時間、年間で約5000時間というペースである。あとのC君D君、E君は営業所のリーダーとして仕事をしている。A君、B君ほどではないが、普通の人の2倍は軽く働いている。年間で4000時間である。

事務関係(給与計算、経理、売上管理など)は奥さん1人が担当している。間接人件費は奥さんとパートの女子1人。従って、奥さんもよく働く。1年365日、24時間体制である。こうしたハードワークに耐え抜くメンバーを、どうしてリーダーであるトップは育成、獲得できたのであろうか。どこにノウハウがあるのか。それは、次の点である。

◎カリスマ性

カリスマとは、「奇跡をほどこし、予言を行う神賦の資質。カリスマ的資質をもつものと、それに帰依するものとの結合をマックス・ウェーバーはカリスマ的支配と呼び、支配類型の1つとした」(「広辞苑」)とある。

トップにはカリスマ性があり、5人の幹部はそれに帰依している。1種の教祖と信者の関係である。最近はそれほどでもなくなったが、鉄拳制裁、ビシッと殴ることもあると言う。            う。かつてのヤクザ渡世の名残りというか、怖い面があるのである。今でもその筋の大物とは、友人として親交があると言う。いろんなトラブルでも、即解決してくれそうな雰囲気があるのである。

かつてある幹部がいたが、突然姿を消した。辞めさせてほしいと言えば、トップが怖いので、黙って姿を消したのであろう、と推察されている。カリスマ的支配の特徴である。付いていけなくなったら、消えるしかないのである。労働基準法のワクとは関係のない、トップとの信頼関係とかカリスマ的支配とかの世界である。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年03月15日 | 投稿者: unityadmin

[2019/3/13]人を育てる職場に

3月13日(水)

無事故運動― 事例A

 

(1) 人を育てる職場に

「無事故運動」はメイン荷主の「取引中止」という危機からスタートしたが、乗務員教育に対しても大きな力を発揮している。とりわけ、班長に任命された者の自覚が高まり、人間的成長に貢献している。

A班にいるD君は、4トン車の運転手である。入社して1年、D君はよく事故を起こしている。荷主先でバックして門柱に当てた、低いところを通って荷台の天井を被った、路上でバックして看板を壊した、などなどである。

A班長はD君とじっくり話し合っている。このままでは、D君は乗務員失格の烙印を押される。「スピードを落として走れよ。交差点では徐行を必ずしろ。走行中の途中休憩は必ずとれ」とキメ細かく話しかける。A班長は、D君の家まで行く。D君の自宅を訪問して、いろいろと話し込む。

「D君、どうして運転手になったの?」

「先輩、それは車が好きなのと、給料がいいかな、と思って、ハンドルを握りました。でもあんまり給料も高くないなあ」

「それだったら、大型の免許を取ったらどうだい。“無事故運動”で優秀賞をもらえたら、社長に頼んでやるよ」

「え、本当ですか」

「そのかわり、これ以上チョコチョコと事故を起こすなよ。そうすれば、社長にも頼みやすいしね」

「はい、分かりました」

D君は大いにやる気になった。6ヵ月間、A班は優秀な成績を上げた。D君は大型免許を取得することができた。A班長の力である。

「自分のことでなく、班員のことを考えるようになって、働く喜びがわいてきました」。A班長の言葉である。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年03月14日 | 投稿者: unityadmin

[2019/3/12]成果を生かし続けよう

3月12日(火)

無事故運動― 事例A

 

(1) 成果を生かし続けよう

6ヵ月経過して、小集団活動発表会の日がやってきた。場所は社長の自宅、日曜日。メイン荷主の物流担当者も来てくれた。成果は上々であった。

「これからも粘り強く続けてください。イタチごっこに耐えていくことです。イタチごっことは“同じことを繰り返して、らちのないこと”の意味です。粘りと根気です」

物流業の社会的使命として、無事故の実現がある。そのためには、乗務員教育の実践がポイントである。

A社では、第2期の職場小集団として、乗務員研修会を行うことにした。内容は、次の通り、ケーススタディである。

①初心者が起こしやすい事故

②慣れからくる事故

③過信から発生する事故

④省エネ運転のポイント

⑤スピードを出さない運転

この5つのテーマに対して危険予知訓練を行い、事故のケーススタディを行っていった。講師は原則として各班長とし、ディスカッションを取り入れて進行していった。

A班長「自分が講師ということになると、勉強もします。これがいいですね。実際に、ほかの班にも負けたくないし、自然と力が入ってきますよ」

B班長「一生懸命やれば表彰、ということで、乗務員研修会への参加もイヤイヤではなく、進んで出席するようになりました」

C班長「事故のケーススタディや危険予知訓練は、いい勉強になりました」

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年03月13日 | 投稿者: unityadmin

[2019/3/11]マナーチェックリストと賞罰制度

3月11日(月)

無事故運動― 事例A

 

(1) マナーチェックリストと賞罰制度

第1回の職場ミーティングには、10人ほどが出席した。乗務員の50%が出席である。

「無事故を達成するためには、どこに問題点がありますか」

導入部として、1人ひとりの問題意識を問い正した。

「事故をするのは、いつも決まっている。その男を何とかして下さい」

こうした意見が続出した。「個人の責任を責めるのではなく、職場全体としてとらえましょう」と説得した。

そこで、第1回の職場ミーティングでは、「無事故運動」として取り組むことを決定した。3班のグループ編成をする。班長を決める。班長の役割は、班ミーティングの実施である。「無事故運動」の第1段階として、マナーの徹底を掲げた。マナーチェックリストを作成して、自己チェックを行い、その内容を班ミーティングで確認することとした。マナーチェックリストの内容は、次の通りである。

①荷主訪問時、明るく笑顔で応対しているか(「毎度お世話になっております。○○社です)

②荷主の立場での言葉遣いと行動ができているか

③電話をかけた時、簡単な挨拶と社名を言えるか

④荷主、荷受人の構内での作業待ちの時は、エンジンを切っているか(アイドリング禁止)

⑤運転室内でハンドルの上に足を上げていないか

⑥決められた服装をしているか

⑦車両の美化を心掛けているか

⑧積み荷に愛着を持っているか

⑨配車指示、業務指示に対し、協力的であるか

⑩省エネ運転、適性スピード運転に心掛けているか

この10項目のマナーチェックリストを活用する。良い、普通、ダメ ―を○、△、×で評価し、各項目をチェック、話し合っていく。班ミーティングでは、10項目の中の3つのを月間重点目標として取り組むこととしている。乗務員の休憩室に、各班の月間重点目標を張り出す。マナーチェックリストの結果も張り出す。

「無事故運動」の第2段階は、賞罰制度の確立である。賞罰制度は、次の通りである。

①対象は班単位とする。

②ペナルティは班員ごとに集計し、点数制とする。

ペナルティの内容と点数は、下記の通り。

普通事故 ― 1~10点

重大事故 ― 10~30点

(重大事故、普通事故のペナルティ点数は、班ミーティング会議にて決定する)

班員のペナルティ点数が30点に達した時は、その班員は車の乗務を一定期間停止する

(期間についても、班ミーティング会議にて決定する)

③各班ごとにペナルティの点数が1番低い班に優秀班賞を授与する。

表彰金額を10万円とし、期間は6ヵ月とする。個人については期間1ヵ年とし、無事故者を表彰する。無事故賞は1人5万円とする。

賞罰制度の確立に当たっては、班長会議にて討議して決定していった。

A班長「表彰していくのはいいけれど、ペナルティはきついよ。だれも事故を起こしたくて起こしているわけではないから、ペナルティはやめよう」

B班長「でも、ペナルティがないと、効き目がない。われわれの事故は、1歩間違えると、人命にかかわる。ペナルティは必要だよ」

C班長「誉めて叱って人は育つ。誉めることが表彰、叱ることがペナルティ。賞罰制度は必要だ」

各班長とトコトン話し合っていく中で、賞罰制度を確立していった。職場小集団活動として「無事故運動」は展開されていった。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年03月12日 | 投稿者: unityadmin