CONSULTANT DIARY川﨑依邦の日々

[2019/3/25] 居場所をつくる

3月25日(月)

居場所をつくる― 事例A

 

(1) 居場所をつくる

人は自分が主人公となれる居場所があって、初めて本当のやる気が出てくる。B氏の居場所は仕事のみであった。仕事場にトコトンしがみついていた。しがみつくだけで発展という成長はなかった。モクモクと身を粉にして働くのみで日々が刻まれていく。こうした居場所は本当のものではない。自己が認められ、気持ちが安らぎ、落ち着き、そして明日への活力がわいてくるのが居場所である。

経営者の仕事の1つとして職場風土づくりがある。職場風土が味もそっけもなくては人は育たない。単なるワーカホリックの範囲でしかない。もちろんB氏のような人には頭が下がるし、心が痛む。

しかし、よくよく考えてみるとこれでは人が育たない。職場風土には心が落ち着く、気持ちがリフレッシュするといったゆとりがいる。それが活力を産み出していく。居場所づくりが経営者に課されている。そのためにには自己の将来イメージがしっかりと持てるようにすることだ。そうすれば、必ず居場所は確立する。

 

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年03月26日 | 投稿者: unityadmin

[2019/3/24]自己改革の始まり

3月24日(日)

居場所をつくる― 事例A

 

(1) 自己改革の始まり

A社長はB氏とじっくり話し合った。自らの想いを伝えた。

B氏いわく「ぼくが休みたいと言えば社長は“よし、そうか”と言ってくれるのは分かっていました。でもここまできたら意地というか自分のほうから休みたいとは言うまいと心に決めていました。親類の冠婚葬祭にもすべて欠席しました。A社長の本当の気持ちが知りたかったのです」。

A社長にしてみれば、必死で働いてるB氏にアレコレと言う気持ちにはなれなかった。「好きなように心ゆくまでしてくれ」。B氏の職場はすべてB氏に任せていた。それで自分の想いを伝えなかった。B氏から自分に言ってくるのをずっと待っていた。しびれを切らしてようやくじっくり話し合った。B氏は自己の将来に対してイメージを持っていなかった。将来の自己イメージが真っ白なのである。

その日その日を生きていくのに精一杯なのである。そこで夢として持っている「自分の家」ということを深めることで、将来イメージを切り開くべく、じっくりと話し合った。今のままの超ハードワークはだれも望んでいない。1年で2日しか休めない生活は正常ではない。経営者でもないB氏が、そこまでする必要はない。

自らの後継者を育成していくことだ。そうすれば家に帰って母に親孝行ができる。家族の団欒が実現できる。その団欒の場を新居で行うことだ。それが人生の豊かさにつながる。ここまでつき詰めて、B氏にはA社長の気持ちが分かった。深く了解した。このことがキッカケとなってB氏の自己変革の闘いがスタートした。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年03月26日 | 投稿者: unityadmin

[2019/3/23]築けない人間関係

3月23日(土)

居場所をつくる― 事例A

 

(1) 築けない人間関係

「あの男はモーレツに働くのです。しかし会議に出て来いというとイヤがるのです。落ち込んでしまうのです。私の悩みはB氏です」(A社長の言)

創業のメンバーである。本来ならば役員になって当たり前である。しかしB氏は会議が苦手である。そもそもリーダーシップを取ろうとするタイプではない。人間関係をうまくつくれるタイプでもない。ひたすら働くのみ。B氏がいなくなると困る。替わりの人材が育っていない。そもそも人を育てようとの問題意識もない。社長の悩みは深い。

普通の人間の2倍は働く男。休めといっても休まない男。確かに頭が下がるほど有り難い。しかし困る。彼がいなくなると彼の職場は機能しない。組織運営になっていない。

その上独身で、“結婚もできない職場”というイメージがある。「1年で2日しか休めない職場」とは鬼の職場であると思わせる。「経営者の顔が見たい」となる。社長にとっては本意ではない。彼には結婚もしてもらい、幸せになってほしいのである。ところがその想いとは反対に「何が楽しく生きているのか」と首をかしげざるを得ない仕事ぶりとなっている。A社長の悩みは深いのである。

「こういった男に対してはどうしたらいいでしょうか。彼の全人生が会社そのものなのです。働くなということは死ねと言っているのと一緒なのですよ。確かに人の2倍は働きます。でも会社経営にとってはマイナスなのです。1人で働くより2人にして、より効率を上げていくことが大切なのです。組織力が発揮されるのです。彼がモクモクとやりすぎるためにマイナスとなっているのです」

その上、B氏は性格がもろいところがある。社長が押し付けていろんなことをやらせようとする。例えば、職場ミーティングのリーダーの役目とする。すると、B氏は自分のカラに閉じこもって一言も口を聞かなくなる。気難しいのである。取り付く島もなくなる。ホトホト手を焼く。「イヤイヤで仕方ない」様子が手に取るように伝わってくる。そこでできるだけ発言をするように仕向けた。粘り強くである。重い口が徐々に開く。

ひたすら働くことに全人生をかけているB氏。働き過ぎることがマイナスになるといったケースである。家庭を犠牲にし、休日も取らず生きていく人生は、すごみはあるが、企業経営にとっては良くない。やり過ぎは良くないのである。

「私は彼の顔を見ると、かわいそうでかわいそうでたまらなくなる時があります。何でそこまで仕事をするのか、つくづく聞いてみたい。わたしは社長として社員には当たり前の幸せをつかんでほしいのです」

社長業には確かに人に言えない悩みも多い。ストレスとの闘いである。中でも悩みが深いのは人にかかわることである。人はさまざまである。企業の経営目的は利潤の追求である。それだけではない。人材育成がある。やる気を高めて能力開発することである。単にもうけの追求のみではむなしい。限りがない。

確かにもうけは企業が生きていく栄養素。それにプラスアルファがいる。それが「人」である。明るく楽しく生きがいをもって、もうける集団でありたい。疲れ果てて心からイヤイヤ働き“金の切れ目が縁の切れ目”と金のみで人とつながりたくない。A社長の想いである。「どうかB氏が幸せになりますように」と手を合わせている。

B氏は社長と一緒になってA社を創業したメンバーである。それだけに社長はB氏に対して思いが深い。「後継者を育成してほしい。結婚してほしい。たまには休んでほしい」―A社長の想いである。

つづく

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| 投稿日: 2019年03月24日 | 投稿者: unityadmin

[2019/3/22]ワーカホリックのB氏

3月22日(金)

居場所をつくる― 事例A

 

(1) ワーカホリックのB氏

B氏はA社創業メンバーの1人である。A社は現社長を含め、3人でスタートした。車両3台からの出発である。業種は運送業。創業してから20年、今では車両台数200台の中堅企業となっている。B氏の役職は所長。年齢50歳。独身。母親と一緒に生活している。よく働く。

1日のスケジュールは朝3時30分起床、4時には物流拠点(営業所)へ出社する。農産物の仕分けをして朝7時までに配送先に運ぶ。1日に動かす車は60台。昼ごろまで物流拠点で仕事をして本社へ行く。本社での仕事は、車両管理(車の点検、整備など)、配車管理などである。

帰社時間は普通で19時、1日で15時間労働ということになる。トラブルが発生すると家に帰れず、そのまま会社に泊まることもある。帰宅後はすぐ風呂に入り、それから食事。食事から始めると風呂に入れないという。そのまま寝てしまうからである。平均睡眠時間は5~6時間。

ワーカホリックという言葉がある。働き中毒という意味である。B氏はワーカホリックとしかいいようがない。その上1年365日のうち、正月の2日間のみが休日という。1カ月ぶっ通しで働く日々が続く。

B氏いわく「社長は“たまには休め”と言われます。でも性分ですね。仕事が気になって家にいると落ち着かないのです」。

働くことが人生のすべてである。その上、将来の希望は「土地を買って家を建てること」。母と2人きりの生活で、家には寝に帰り、食事するだけ。給料も高給というほどではない。20年間働いていまだ借家暮らしの状況である。酒も飲まない。なぜそこまでして働くのか。

「3人でスタートした頃はもっと働きましたよ。家に帰る時間がなく、社長の家で下宿していたようなものです。社長の奥さんに食事を作ってもらいました。社長もハンドルを握って働き抜いていました。いつ寝るのかというぐらいの日々でした。奥さんが配車から経理まですべて1人で切り盛りしていました。それから20年、月日の流れは早いです」

B氏は経営者ではない。役員ですらない。酷使されているように映る。過労死しても不思議ではない。なぜそこまで働くのか。つくづく考え込まされる。創業の頃の苦労を懐かしそうに話す。1日たりとも休んだことがないという。「体が丈夫」ということである。

はた目には、あまりに働き過ぎて女性とのつき合いすらなかったようにみえる。独身であるのも当然である。平均1日15時間、年間休日2日の男に家庭生活のにおいはない。結婚どころではない。

「僕には働くしか生き方を選べないのです。この仕事しかないのです。社長と一緒にやっていくだけなのです」

普通の人はもっといい暮らしがしたいとか、もっと給料を稼ぎたいとか、いい食事をしたいという欲がある。B氏にはそれが感じられない。まず風呂から入らないと夜の食事ができない生活、疲れ切っている日々。何が楽しいのか。給料も社長と比べると天地の差。

「あほらしい、何でこんなことを続けているのか、バカみたい」と思う瞬間はないのか。いっぺんもないという。後10年もすれば定年、それまで体が続くのだろうか。B氏の生き方はナゾである。生きることの重さといったことを考えさせられる、このような社員がいれば経営者にとっては不気味ではあるまいか。

つづく

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| 投稿日: 2019年03月23日 | 投稿者: unityadmin

[2019/3/21]信頼の含み益

3月21日(木)

情と非情のバランスシート― 事例A

 

(1) 信頼の含み益

もう1つのエピソードがある。A社の荷主から、夕方ギリギリになってオーダーが来た。配車係は「車がありません」と答えた。この荷主は古くからの付き合いである。それこそA社長自らハンドルを握って、この荷主の荷物を運んだものだ。

A社長は配車係の「ノー」の答えを聞いた。「車がありませんと言って、断るな。どんなことがあってもやるのが、わたしの方針だ。わたしを使え。わたしが行く」。A社長は本当に、自らハンドルを握って仕事をこなした。

運賃は知れている。A社長の1時間当たりの賃金を考えると、割に合わない。確かにこの日は、超繁忙であった。配車係としても、いろいろ手を尽くしての「ノー」の返事である。

それでもA社長は許さない。創業のころからの付き合いで、ここまで会社を発展させてくれた荷主の1つだ。どんなことがあっても、やっても、やり抜く。A社長は配車係に宣告する。

「お前はわたしの方針に合わん。あすから運転手に戻れ」

常日ごろから「金のないのは首のないのと同じだ」と言い続けているA社長。このエピソードは何を物語るか。通常の商取引では、このオーダーは割りが合わない。配車係にもそれなりに苦労した。100台の自社車両を有し、それとほぼ同台数の傭車を動かすA社のトップ自らハンドルを握る。一見すると、むちゃくちゃ。しかも、配車係は運転手へと異動である。こうまでしてやり抜くのは、目に見えないバランスシートのためである。荷主との信頼、信用の含み益を大切にしようとしているわけだ。

A社長いわく。「信用、信頼は金で買えるか。金で買えていると思っているのは幻や。幻はいつしか消えていく。わたしが死んでも、残るのはこの信用や。信用は残る。荷主の心に残る。運転手に戻した配車係も、きっと分かってくれる。おやじの本当の気持ちというものが、分かってくれる。運送屋の心意気というものが、必ず分かってくれる」。

以上

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| 投稿日: 2019年03月22日 | 投稿者: unityadmin