CONSULTANT DIARY川﨑依邦の日々

[2019/2/17]頑張りには報いたい

2月17日(日)

物流子会社の生き残り作戦― 事例A

 

(1) 頑張りには報いたい

自車乗務員の成果配分制度実施

「労働時間内に一生懸命、回転率を上げるのはしんどい。給料は変わらない。早出出勤して中途半端に帰社すると余分な仕事をさせられる。早出出勤ということで残業手当ももらっている。これ以上働いても一文の得にもならない」。

これが自車乗務員の大方の気持ちである。そこで残業手当に代わるものとして、業績給を充実、強化することとした。

基本コンセプトは次の通り。

①基本給の改正

長年続けてきた基本給表を改革し、10ランクにして基本日給表を設定した。10ランクということで、上限を明確にした。従来は、親会社の給与体系にスライドして、年功型の基本給であったが、この基本給表をボツにして、日給型の基本給を採用した。

②手当の見直しと業績給の充実、強化

皆勤手当、家族手当、住宅手当など、いろいろな手当てを廃止した。それに代わるものとして業績給の充実、強化に努めた。運送収入から変動費を引いた粗利益額に歩合率を掛けて業績給とした。この業績給が成果配分制度である。

A社の給与改革は″成果配分″をキーワードとしている。「これからは自動的な昇給ナシ。1年経てば給料が上がるといった定期昇給はない。それに代わるものとして成果配分制度がある」。

A社長の強い決意は社内の猛反対を跳ねのけて実現した。このままいくとあと2年で債務超過という土壇場が、社長の強い決意の実現に幸いした。土壇場の迫力が味方した。例えは悪いが、火事場の馬鹿力である。

親会社も頼りにならない。頼りになるのは一人ひとりのやる気。A社の一人ひとりの構成員の真剣な頑張りでしか道は拓けない。苦境からの突破の道は、その頑張りに報いる成果配分制度の実施である。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年02月18日 | 投稿者: unityadmin

[2019/2/16]制度改革でやる気に

2月16日(土)

物流子会社の生き残り作戦― 事例A

 

(1) 制度改革でやる気に

A社長は強い決意で抜本改革に着手する。

①配車体制の改革

不正を働いていた配車担当者をどうするか。社内の空気としては「悪いことをしていたな。でも、本人も反省している。許すしかないのではないか」。それに対してA社長は配車体制の改革を断固決意する。不正を働いていた配車担当者はクビである。新しい配車担当を選任しようとするが、なかなか引き受ける者がいない。目星を付けた者ことごとくが尻込みをする。「わたしは適任ではありません。すみませんが、ほかの人を探して下さい」。

実は、現場から事務所に入り配車担当者の机に座ると給料が目減りする。残業が付かないので、金額にして月5、6万円はダウンする。そのうえ頭を使わないといけない。現状の仕事は体を使う。体の疲れはお酒の一杯でも飲んで、グッスリ寝ればスッキリする。しかし、頭を使う仕事は酒一杯飲めば吹き飛んでしまうものではない。

夜中でもいろいろ気になって眠れない日もある。仕事の段取り、車の手配を考えるとイライラし、胃がチクチクし、ゆっくり眠れない。その上給料もダウンする。「好き好んでやる仕事ではない。リベートを取っていた配車担当者も悪いが、そうでもしなければやっておれなかった気持ちも分かるよ」。

A社長はニッチもサッチもいかなくなる。悩んだ末、配車担当者に成果配分制度を導入することとした。つまり運送収入から変動費(燃料費、高速代等)を差し引いた粗利益額の一定割合を、新任の配車担当者に配分することとした。

粗利益額の目標値を設定し、一定割合としてオーバー部分の10%を配分するとした。そうすれば、配車担当者は1人ひとりの乗務員に燃費効率の向上をアドバイスし、高速代の節約についても指示しようとする。目の色が変わるはずである。日々の労苦に報いることができる。

かくして30代の若手の乗務員が「やります」と手を挙げた。入社6年目の中堅ドライバーである。自車優先配車を旗印に掲げて配車体制を確立することとした。外部に流れ出している傭車費の大幅削減、いわば内制化である。

今までの配車担当者は「傭車をカットすると、忙しくなって車が必要な時に集められなくなります」と言って自車優先に反対してきた。そのやり方の改革である。「これから忙しくなることがあろうか」―見通しは暗い。生きるか死ぬかの状況が続く。断固として自車を遊ばせてはならない。働き抜いてもらうしかない。

つづく

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| 投稿日: 2019年02月17日 | 投稿者: unityadmin

[2019/2/15]社内には緊張感なし

2月15日(金)

物流子会社の生き残り作戦― 事例A

 

(1) 社内には緊張感なし

A社長のやる気は空回りし、孤立し、〝裸の王様〟状態である。ジリジリと財務状況は悪化し、A社の職場風土は暗くなるばかりである。職場風土の現実は次の通り。

①  親会社の出向組とプロパー社員との反目の深まり

「どうせ親会社のバッジを水戸黄門の印籠にしているだけだ。この苦しい時こそ何とかするのが親の役目だ。親らしいこともせずに偉そうにするな」―プロパー社員。

「とにかく面従腹背が染みついている。文章ひとつ、レポートひとつ書けなくて、実にレベルが低い。危機感もない。親方日の丸根性丸出しだ」―A社長。

②  配車部門と乗務員とのコミュニケーション不足

「なんという効率の悪い配車をするのか」―乗務員は配車部門に対して不平不満を高めている。

「うちの乗務員は楽をすることしか考えていない。サボリ集団、手抜き軍団である」―配車担当者の嘆きである。

③  物流品質の悪化、事故の多発

荷主からはクレームが続く。誤配、延着が一向に減らない。遂にはある荷主から取引き中止を通告され、同業の大手運送会社に仕事を取られた。それでも依然として社内の空気はたるんだままである。「仕方ない」―A社長の危機感は空回りするばかりである。

④  傭車管理のズサンさ

傭車に対する運賃を値引きし続けている。荷主からの運賃値引きをそのまま傭車にしわ寄せしている。

傭車先も悲鳴を上げている。配車担当の不正も発覚する。ある傭車先が、配車担当者に裏でリベートを渡していた。「こんなに運賃ダウンではやっていけません。なんとかして下さい。実は、配車担当者に裏でリベートを渡しています。配車担当者の要求で長年続けてきました。これをやめさせて下さい」。傭車先からの告発である。運送収入が対前年比で30%ダウンしているが、その内訳は自車で40%、傭車で15%のダウンである。自車の稼働率が大幅に悪化している。平たくいえば、自車を遊ばせて傭車を活用している。「どこの会社の配車をやっているのか。傭車先の回し者、スパイか」とB社長は怒る。その裏でリベートを取って、会社を食い物にしている。

こうしたA社の職場風土の現状改革が急務である。親会社の出向組とプロパー社員との深い反目、配車部門と乗務員とのコミュニケーション不足、物流品質の悪化、事故の多発、傭車管理のズサンさ、これらの現状に対する抜本改革が危機を乗り切るキメ手である。

つづく

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| 投稿日: 2019年02月16日 | 投稿者: unityadmin

[2019/2/14]笛吹けど社員は……

2月14日(木)

物流子会社の生き残り作戦― 事例A

 

(1) 笛吹けど社員は……

物流子会社のA社は苦闘している。親会社は収益状況が悪化しリストラの真っ最中である。

A社の運賃収入に占める親会社の比率は40%である。過去10年の営業努力でようやくここまでこぎつけてきた。

不況の大波に直面しているB社。対前年比率で30%の売上ダウンである。親会社も苦しいので、「自力で生きてくれ」と通告されている。いわば「つぶれてもかまわない」ということだ。

A社長は、親会社の生産現場でコストダウンに長年取り組み、1年前にA社の社長赴任した。当初の心境は「良きにはからえ」であった。「どうせ運送業のことはよく分からないし、2年の任期でお役ご免だ」と高をくくっていた。

ところが、業績が悪化し、月々赤字が累積する。出血が止まらず、たれ流しが続く。このままいくとあと2年で債務超過になる。資本金を食いつぶすのである。余生のつもりでノンビリとサラリーマン人生を全うするつもりが、足元に火がついてきた。

A社長は悩みはじめた。経営の基本原則のひとつは〝入るを計って出ずるを制す〟である。収入が30%ダウンしているのだから、支出も30%ダウンさせればいいわけだ。ところが、支出を30%ダウンさせるには壁が立ちふさがっている。運送業は労働集約型産業であり、人が中心である。その人が、壁となる。「そんなに簡単に首切りはできないし、給料の30%カットもできない」。

A社長の悩みは深まる。親会社も頼りにならない。任期も2年とすると、あと1年しかない。適当に時をやり過ごすことには良心がチクチクする。

A社は物流子会社として、トップは親会社から赴任する。任期は長くて4年、普通は2年。業績がいい時のトップの役割は「良きにはからえ」方式である。プロパー社員に酒の飲み方やゴルフの上達方法などを教えていれば、あっという間に任期が終わる。任期の2年はいわば退職金代わりみたいなものである。プロパー側からしてみれば「うるさく口出ししないトップ」が望ましい。

しかし、不況の大波は従来のパターンを許さない。A社長は決断する。「いつまで社長を続けるか分からないが、社長でいる間はやるだけやってみよう」。やる気を出したのである。

プロパー社員は内心、冷ややかである。「いつまで続くか、お手並み拝見」。長年にわたりトップが2~4年でコロコロ変わってきたので、面従腹背が定着している。実務はプロパー社員が取り仕切っている。トップのいう事には一応「はい」と返事しておけばよい。時が見方する。

それに対してA社長は「赤字、赤字」と連呼して笛を吹く。危機感を全面に打ち出したのである。ところが、プロパー社員はソッポを向き、フテ寝を決めこむ。

「赤字、赤字と言われてもピンときません。かえってやる気がなくなるよ。こんなに一生懸命働いても、赤字と言われるとガックリくるよ」

「社長は口を開けば〝人件費が同業他社と比べて30%は高い〟と言われるが、それだけ働いているよ。給料ドロボーみたいに言われるのは心外だ。それだけいうなら、親会社からの出向組をクビにしろ」……。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年02月15日 | 投稿者: unityadmin

[2019/2/13]全員参加型経営

2月13日(水)

小企業の生き残り作戦― 事例A

 

(1) 全員参加型経営

A社が黒字転換できた要因は何か。それは一人ひとりが経営情報を共有化して「よし、がんばろう」と気持ちが一つになったことである。運送業の生き残る道として、A社の経営は示唆に富む。全員が経営に参画することは、不思議なパワーを会社に与えるものである。

どうしようもない赤字が黒字になる。よく考えれば不思議でも何でもない。経営の大原則を実行したからだ。当たり前のことを実行したからだ。経営の大原則とは、経営情報の公開であり、全員経営参画型体制の構築である。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年02月14日 | 投稿者: unityadmin