CONSULTANT DIARY川﨑依邦の日々

[2019/4/21]企業永続のポイント

4月21日(日)

後継者の育成― 事例A

 

(1)企業永続のポイント

後継者づくりは10年仕事とも言われる。1年やそこらの付け焼き刃では、間に合わない。少なくとも、10年単位で考えていかねばならない。

山づくりとよく似ている。山に植える木は、1年やそこらでは成長しない。どんな山にして、いつ伐採するか。目的意識をもって、後継者づくりをすることである。

A社長は70歳。しかし、元気である。朝はいつも7時には出社し、神棚に水を捧げ、1日の無事故を祈って手を合わせる。朝礼ではラジオ体操をし、社訓を唱和する。そして1日の注意事項を伝達する。そして、職場巡回をする。とくに5S ―「整理」「整頓」「清潔」「清掃」「しつけ」 ―にはやかましい。口をすっぱくして徹底する。

職場ごとに、月間スローガンを決めて、乗務員休憩室に大きく張り出し、その掲示板の前で、1人ひとりの乗務員をつかまえて、会話をする。生涯現役の実践である。生きている限りは戦い抜く ―ということである。

筆者は、A社長の姿に心打たれて、40歳の学者の息子に、跡を継ぐように説得した。家業は、継続してこそ、本当の家業である。

「そんなこと言われても、わたしは運送業のことは何にも分かりませんよ」

固辞である。しかし、話をしている間に、ほぐれてきた。

「そういえば小さい頃や、中学の時、トラックの荷台に乗せられて、親父と一緒に東京まで行ったことがあります。深夜の道を、猛スピードで駆け抜けていったことを思い出します。親父の背中を見て育ったわけですね。一度も、家業を継げとは言われたことはありません。好きな道に進め、と言ってくれました。わたしが国立大学に入学した時も、たいへんよろこんでくれました。父親には、心から感謝しています。でも、跡を継ぐということは、諦めてもらいたいですね。リーダーの中から後継者をつくればいいのですよ。そのように親父には伝言して下さい」

後継者づくりは、経営者にとって仕事の中の仕事である。いわゆる、代行者の育成である。自らの代行者づくりこそ、企業永続のポイントである。

明日は見えない。今日生きるのに精一杯。だからこそ、明日をしっかり見ていくことが今日の活力となる。明日の中に、後継づくりを芯にすえていくことだ。

バトンタッチが経営人生というものだ。バトンタッチを夢見て、日々を全力で生きるのだ。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月22日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/20]永続性も経営の目的

4月20日(土)

後継者の育成― 事例A

 

(1)永続性も経営の目的

中小企業の運命は、いつしかつぶれていくようになっているのかも知れない。「つぶれる」と言えば表現がキツいが、消えていく、溶けていく ―といったところだ。

日本国には、相続税がある。A社の場合は、会社内容がよくなればなるほど、株価が上がる。株を相続する学者の息子には、重い税金がのし掛かってくる。相続税を払うために、四苦八苦する。このプロセスで、企業が消えていくのかも知れない。経営の目的は、収益性、教育性、社会性、永続性 ―である。

①収益性

企業は、利潤なくしては罪悪である。ところが、物流企業の大半は、アップアップしている。もうける力なくして、企業とは言わない。

②教育性

企業活動のプロセスで、それに従事する者の人間性を向上させていくことが、企業経営の目的である。働く人の鬱が増えている。体調が悪くなる人もいる。こうしたことが企業経営の目的ではなく、ヒトとしてのレベル=人間性 ―を向上させていくことが目的である。

③社会性

人様の役に立つことが、社会性である。犯罪会社であってはならない。荷主の役に立つことで、社会性を獲得することができる。利潤を出すことで税金を納付する。このことも、立派な社会性である。

④永続性

“パッと咲いてパッと散る”桜の花も美しいが、企業の目的は、永続性にある。継続することである。永続性にチャレンジするのが、企業というものである。

A社は現状として、収益性、教育性、社会性はそれなりに具備している。しかし、永続性に赤ランプがともっている。赤ランプの原因は、人づくり、とりわけ後継者教育の不在にある。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月21日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/19]オヤジとリーダー

4月19日(金)

後継者の育成― 事例A

 

(1)オヤジとリーダー

A社長は70歳である。物流業を創業したのは、45歳の春。今では、車両台数50台、社員数70人の中堅物流業に成長している。年商は10億円、経営は堅実である。

A社の経営会議のメンバーは、6人である。全員が現場出身で、創業メンバーである。A社長が独立の旗を上げた時、運転手として集まった者たちである。

A社の成長要因はどこにあるか。

①人一倍汗を流したこと

独立した時は、青ナンバー(免許)ではなかったので、同業者が嫌がる仕事を引き受けて、人一倍汗を流した。手積み、手卸ろしは当たり前で、汗びっしょりの日々に耐えてきた。このハードワークに耐えてきたのが、成長要因の1つである。

②柱となるメイン荷主をつかんだこと

創業して10年は、文字通り地をはってきた。免許を取得して、メイン荷主をつかむことができた。はじめはわずかな額であったが、徐々に拡大していった。荷主が高度成長の波に乗ったのである。運送、それに配送センターの運営と、業容を拡大していった。必死についていった。こうした1歩、1歩で中堅物流企業へと脱皮していった。

③A社長の人柄

創業メンバーの運転手が、経営幹部となっている。A社長についてきている。A社長を“オヤジ”ということで信頼している。

経営幹部は全員、50歳を越えている。50歳を越えても、忙しい時には大型車のハンドルを平気で握って走る。フォークリフトにも乗る。全員が、野戦型のリーダーである。プレイングマネージャーである。1日中、机に座っていることは、まずない。

とにかく、体を動かす。A社の成長要因は、結局のところ、人一倍の汗、メイン荷主の存在、社長の人柄に求めることができる。

この成功要因に、暗雲がたち込めてきた。経営幹部も50歳を越えて、体力も弱ってきた。かつては24時間眠ることもなく働き続けることができた体力も、年には勝てない。さらに社長も、70歳の坂を超えた。これから、A社はどうなるのであろうか。

「社長と一緒にやってこられたメンバーも、50歳を越えました。後継体制はどうですか」

現在の経営幹部の役職は、単に“リーダー”である。役員ではない。リーダーの中から、経営を任せられる人物はいるか。ドングリの背くらべであり、無理にだれかを引き上げようとすると、波風が立つ。引き上げられた者へのやっかみ、ねたみが生じる。

「今まで一緒にやってきたのに、何であいつだけが役員に登用されるのか」との声が起きる。

A社長は、役員構成は家族で固めている。ファミリーカンパニーという側面がある。

筆者の問いに対して、A社長は「分からない」と答える。A社長には、息子がいる。40歳である。この息子は、学者の道に入っている。

「今さら“家業を継げ”と言っても、わしの息子には無理ですよ」

「確かに無理かもしれません。しかし、ファミリーカンパニーである以上、息子さんしかいませんよ」

配送センターの土地取得と建物の設備投資で、3億円の借金がある。この借金を他人にすんなりとかぶせられるであろうか。まして、リーダーは全員現場出身で、今でもハンドルを握る者ばかり。いわゆる、経営者タイプではない。

「後継体制はどうしますか」

重ねて、筆者が問う。

「もっといい会社にして、だれに売るしかないかも知れません」と社長は苦笑いする。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月20日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/18]創業30年に幕をおろす

4月18日(木)

大切な心の経営― 事例A

 

(1)創業30年に幕をおろす

会社に出てこなくなった社長の代わりとして、やむなく古参幹部が団体交渉の席につく。しかし悲しいかな、古参幹部には決定権がない。組合からはコテンパンに責められる。古参幹部の1人が「これではやってられない」と退社するほどの事態である。

二代目社長の強がり底が見えた。裏付けのない経営力しか持っていなかったA社長。単に先代の息子、というだけのことである。団体交渉に引っ張り出されてからのA社長は見るも無残。カッとはくるが、組合からの街宣車攻勢でやむをえず譲る。

街宣車攻勢となると、荷主がじわじわ逃げていく。ただでさえ売り上げがダウンしているのに、荷主まで尻込みしていく。強気のA社長も組合のいうことを聞かざるを得ない。

「あの超ワンマン社長に勝った。ザマみろ」と組合は勢い付く。ズルズルと組合の要求に引きずられていく。気づいてみれば、もろもろの労働条件の向上で、人件費がアップしてくる。人件費のアップに耐え切れなくて赤字が深刻化する。

3年連続の赤字で債務超過となる。孤立したA社長はついに経営を投げだす。辛抱ができなくなったのである。資金繰りがつかなくなっていたA社は、創業30年の幕をおろした。倒産である。

A社長の失敗は、現場の心をつかみ切れていなかったことにある。働く1人ひとりの心が分かっていなかったのである。いくら国立大学を出て頭がよくても、心が読めなくては経営に失敗する。「このおいぼれ」という言葉に見られる傲慢さ。派手でええかっこしいの行動。イエスマンしか周りにおかなかった超ワンマンぶり。

A社長の生き方は「私欲」に重点を置いてきた。自分さえよければいい ―とばかり、棚からぼた餅の社長の甘い蜜をむさぼってきた。そのつけが社員から孤立し、見放され、ついには「バンザイ」していく姿となった。

バンザイとは倒産のことである。A社長はいわく「やっぱり金の切れ目が縁の切れ目で、本当の意味で心の通じ合う経営幹部を持てませんでした。心の大切さを知りませんでした。先代から引き継いだすべてがパーとなりました。自己破産してはじめて自分のバカさ加減を知りましたよ」。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月19日 | 投稿者: unityadmin

[2019/4/17]孤立したA社長

4月17日(水)

大切な心の経営― 事例A

 

(1) 孤立したA社長

労働組合結成通知書と団体交渉申入書を手渡されたA社長。「59歳の老いぼれ分会委員長め。何を血迷ったのか」 ―すぐさま経営会議を招集して、古参幹部を責め立てる。「こうなったら、組合員の1人ひとりをやめさせろ」とけしかける。すると、おずおずとある幹部が発言する。そういうことをするなと、組合結成通知書に書いてあります。“不当労働行為をするな” ―となっています」。

だれもA社長に同調しない。今度ばかりは、何をどうしたらいいか分からない。居並ぶ幹部は下を向く。「団体交渉なんかしない。そのままにしておけ ―」とA社長。

ところが、労働組合は連日、申し入れをしてくる。「団体交渉の日時を決めて欲しい」 ―時には電話、時には直接、会社に出向いてくる。上部団体から矢のような催促が続く。

会社の幹部は返事ができない。「社長に聞いて欲しい」の1点張りである。幹部の中には、密かに腹の中で「うちのぼんぼんは組合でもできないと目がさめない」と組合にシンパシーを寄せている者もいる始末である。

肝心のA社長は逃げの姿勢をとっている。常日頃の大言壮語ぶりもどこへやら、ついには会社に出てこなくなった。逃げたのである。A社長にしてみれば、だれも自分に味方しないので、すねたわけである。「わたしは知らない」とばかりに逃げたのである。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年04月18日 | 投稿者: unityadmin