CONSULTANT DIARY川﨑依邦の日々

[2019/5/11]朝に強くなれ

5月11日(土)

家庭の平和づくり― 事例A

 

(1) 朝に強くなれ

「うちの会社は寂しい。朝5時の早出の時は、事務所にはだれもいない。お早うの一言、事故に気を付けての注意。会話の少ない会社です」(A社乗務員)

朝の出発にメリハリをつけて「さあ、きょうもやるぞ」との気持ちを共有化していかねばならない。朝に強くなることだ。

「家庭をうまく和やかに円満にする――ということですね。朝のスタートを勢いよく、ということですね。分かりました。やるだけやってみますよ」(A社長)

企業の命運を握っているものは、何であろうか。もちろん、荷主もそうである。見方を変えれば、企業のトップもそうだ。トップのかじ取りが暗転すると、その企業は危なくなる。物流業は人を中心とする。サービス業であるだけに、トップのあり方がきわめて重要である。A社のピンチを切り開くには、トップの覚悟がものを言ってくる。

現在のように家庭もうまくいかず、生活リズムも夜型で、しかも朝を軽視していては、トップの覚悟はあせりと自滅化へと突き進む。トップの心の持ち方が大切となってくる。自らが、全責任を負う覚悟がいる。家庭がうまく回っていないのは、だれのせいでもない。自らの責任として受けとめる。

そして心の底からのやる気を燃え上がらせるために、生活のリズムを変えて、早起きに挑戦する。一種の修行者というか、何事もどんな苦労も、己を鍛え、磨き、高めてくれるものととらえて、「われ以外みな師」との謙虚な心持ちで、生きていく。

A社が苦境から転換していくためには、収入を増やし、経費を減らし、経営数字をタイムリーにつかむことが必要である。いい荷主を獲得していくといった経営マネジメントの基本も大切であるが、何よりも大前提はトップの自己改革である。「家庭の平和」と「朝に強くなる」ことだ。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年05月12日 | 投稿者: unityadmin

[2019/5/10]円満からエネルギー

5月10日(金)

家庭の平和づくり― 事例A

 

(1) 円満からエネルギー

それには、自己改革ではあるまいか。努力するわけだ。朝は早く出勤する。外食ばかりから脱却して週に2、3回は家で食事する。夫婦間のコミュニケーションを復活する。どこから見ても、社長は変わったと言えるような自己改革をする。それが、「人事を尽くして天命を待つ」という心境である。家庭の平和づくりからスタートする。

A社は大ピンチである。年商に見合う借金を抱えて生き延びていく道は困難である。困難には立ち向かっていくしかない。そのエネルギーは家庭の平和というか、円満さから湧き出てくる。やるべきことをすべてやるしかない。

いわば、開き直りというか、土壇場の底力に光明を見いだしていくことだ。自分1人の力ではなく、全社員の力を発揮させていくことだ。それには身を挺することだ。

この″身を挺する″エネルギーは、家庭の平和を源泉とする。社長は仕事でも家庭でもギリギリの状況で苦悩している。この苦悩は続く。困難に立ち向かう迫力は、家庭の愛ではぐくまれるものだ。家庭の信頼関係の強さである。

「何もなくてもいい。命さえあれば、またやり直せる。」A社長の自己改革の実践へ向けての決意は素晴らしい。生活リズムから変えて、朝早く出勤するようにする。

まさに、朝に強くなることだ。夜更かしが続くと気力が萎える。まして、いつ社長が出勤するか分からない状況では、社員の意欲は盛り上がらない。幾ら夜遅くまで働いているとはいっても、これでは空回りだ。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年05月11日 | 投稿者: unityadmin

[2019/5/9]問題分析

5月9日(木)

家庭の平和づくり― 事例A

 

(1) 問題分析

以上、実に厳しい指摘である。一口に言って、末期症状か。

しかし、A社長はまじめな人である。本業以外の遊びにうつつを抜かすわけでもない。

①の点は、中小企業の現実である。②は信頼関係。③は給与。④は優柔不断にならざるを得ない経営の現実である。年商額にほぼ見合う設備投資を実施して、ワンマンではないとはいえない。優柔不断と言えるのか。中小企業の経営者が大きな″ユメ″を持って、チャレンジすることは責められることであろうか。

「社長、毎日本当に忙しくされてますね。人手が足りないというべきでしょうか。損益の把握にまで手が回らないわけですね。営業開拓する時間もないですね」

こうした経営の現実をどうとらえ、どこに戦略を見いだすべきか。A社長の苦しさもよく分かる。中心メンバーの悩みもよく分かる。

「資本繰りが苦しいのでどうしたら良いかということですが、それは利益を上げていくことが基本です。利益を上げていくには、至極当たり前なことを実践することです。一言でいって、″入るを計って出ずるを制す″。トップ自ら改革することではないでしょうか。奥さんとの仲も悪いとのことですが、ここから変えていくことですよ。例え、すべてなくなっても自分には家内がいる、といった関係をつくることですよ」

「家内と不仲には深いものがあって、一朝一夕ではどうにもなりません。実は登校拒否の中学2年の長男がいましてね。この長男のことでも打つ手なしの状況です」(社長)

「奥さんが1年前から、例え半日でも手伝いにこられていることを、よい方向に解釈したらどうですか。本当にトコトンまで仲が悪かったら、会社を手伝う気にはならないでしょう」

「いやトコトン悪い。家内の兄である営業部長とつるんで、わたしを棚上げというか、孤立させようとしている――と、にらんでいますよ」(社長)

「夫婦仲が悪くなったり、長男が登校拒否をしたり、どうしてこうなったんでしょうか。社長も毎晩外食ばかりでは体にも、いいことはないでしょう。こうなった原因は、どこにあったんでしょうか」

「それはわたしの不徳の致すところです」(社長)

A社長は大きく伸びようとするユメを持ち、その実現へ向けて倉庫建設というチャレンジ行動を起こした。その結果、ギリギリの経営状況を招いている。″不徳″ということで済まされる問題ではない。どこから手を付けるべきか――というと、家庭内の平和である。家庭崩壊寸前の状況から逃げ出すべきではない。逃げずに立ち向かうことである。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年05月10日 | 投稿者: unityadmin

[2019/5/8] 経営危機

5月8日(水)

家庭の平和づくり― 事例A

 

(1) 経営危機

「いよいよ資金繰りが苦しくなりました。昨年建設した倉庫は、借入金5億円(土地取得費含む)、元金返済が始まっています。計画通りに売り上げが上がらず、苦しいの一言です。どうしたらよいでしょうか」とはA社(年商6億円、社員数40人、車両台数30台)の社長の言。

「ほかの借入金を合わせると、年商のほぼ100%分の借金ということになりますね。この1カ月の経営状況はどうなっていますか?なるほど売り上げは対前年比10%ぐらいの伸び率ですが、経費のアップ率はそれ以上ですね。月々の損益はつかんでいますか?」

「それが今期に入って経理の担当者が退職したため把握していません。直感では大赤字というところですね。倉庫を建設した1年前から、わたしの家内が半日ペースで出勤しています。家内の兄が営業部長ということで引っ越し部門、一般荷主を担当しています。家内はその営業部門の補佐役をやっています。一般荷主の配車担当は古くからの古参社員です。この3人が今のところ中心メンバーです。管理面と資金繰りの担当がわたしです」(社長)

「この3人の中心メンバーと社長との関係は、うまくいっていますか?」

「さあどうですかね。うまくいっているとは言い難いですね。わたしと営業部門はミゾというか、もうひとつしっくりいっていませんね。家内の兄である営業部長は、倉庫建設に反対して、1年前にいったん辞めるということで、辞表を出したほどです。ドライバー出身者の古参社員は、わたしによく付いてきてくれています。しかし、営業部長とソリが合いません。従って、引っ越し部門と一般荷主部門との配車実務が協力関係にありながら、もうひとつしっくりいっていませんね」(社長)

A社の経営会議に参画した。メンバーは社長と中心メンバー3人である。テーマは、「わが社の緊急課題とその対応策」。

中心メンバーが口々に指摘する問題点は、次の通りである。

①営業面では直接荷主が少なく、下請けが多く採算状況が悪い。引っ越し部門も採算を把握していないので売り上げは上がっても、実際にどうなっているのか分からない。人員不足のため、稼働していない車両が全体の15%もある。従って、配車担当の古参社員がやむなくハンドルを握らざるを得ない状況が続いている。

②人事面では、中心メンバーのそれぞれの仕事がスムーズな協力関係となっていない。社長は夜遅くまで働いているので、朝の出勤が遅い。

③昇給がない。そのため社員に「どうなっているのか。苦しいとは聞いているが、どうなっているのか」という不満が広がっている。

④社長はもっとワンマンであってほしい。優柔不断は、ほどほどにしてほしい。

つづく

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年05月09日 | 投稿者: unityadmin

[2019/5/7]壁を突破する信念

5月7日(火)

親分肌のリーダー― 事例A

 

(1) 壁を突破する信念

トップいわく「うちは引っ越しはやっていませんが、たまに荷主から引っ越しの依頼があります。親分肌のリーダーはどうするか。″よし、やります″と言って部下を連れていく。日曜日の引っ越しです。1人に1万円ぐらいずつ、その場で手当として渡します。残りを懐に入れるのは、親分肌ではありません。残りをパッとみなのために使える男が、人の心をつかむのです。引っ越しは本業ではないので、会社の売り上げに計上しなくても、わたしはとがめだてしません。ただ残りを懐に入れる男は許しません。残りをパッとみなのために使える男、飲み食いするもよし、積み立てて旅行に行くもよしです。こうした親分肌のリーダーが物流業にとっては要るのです」

「ここのところが、大企業から来た本社スタッフが分からなかったところです。うちの会社は組織で動くところまで、いっていないのです。人のつながりで動くのですよ。言ってみれば、男の約束は法に優先するといった世界です」

今回の異変は、親分肌不在の組織が招いたものであった。心のつながりが薄れていた。トップは反省する。

「後継体制ということで、現場に足を運ばなくなって、コミュニケーションが深く取れていなかったなあ。自分でやれば何とかなる。しかし、いつまでもオレ1人で引っ張っていって、それでいいのだろうか。組織を大きくし過ぎたか、理想に走りすぎたか。小ぢんまりとした集団に変えていくべきか。どうしたものか」

この悩みこそ家業、生業からスタートして、小企業になり中堅へとたどり着いた時、前方に立ちふさがる壁である。トップの個性でもっているのが、中小企業の現実である。大きくするとデキモノのごとく壊れていく。トップの思いが伝わらなくなる。トップの思いの共有化の密度が薄くなる。壁の突破はどうするか。奇手妙手は浮かばない。

答えは、トップの信念である。トップの信念が「進むこと」にあるとしたら、必ず壁は突破できる。何回も何回も頭をぶつけていく中で、道は開けていく。闘いをやめないこと、なにくそのガッツを発揮すること、この信念が道を開く。経営道は人生そのもの、生きること、そのものである。「投げたらおしまい」なのである。

以上

カテゴリー: 経営コンサルティング活動の実話
| 投稿日: 2019年05月08日 | 投稿者: unityadmin