「人を活かす、経営に活かす」第54回
~ 管理者日報と経営実績報告書の活用事例 ~

物流業の経営活性化のキーワードは、コミュニケーションをよくすることにある。日々の仕事に追いまくられて、心に余裕がなくなっていないか。あるいは、必要な経営数字の把握が疎かになっていないか。コミュニケーションをよくしていくには、管理者のあり方が問われてくる。

【1】管理者日報の活用

A社では、管理者は日報(表1参照:PDF17KB)を書くことになっている。必ず社長に提出する。

  1. 本日の活動報告―出社時間と帰社時間を記入する。労働時間を把握する為である。長時間の日々が続くと健康に留意することとなる。1日の主な行動について、時間の流れに基づいて記入する。営業の為どんな荷主に訪問したか、ドライバーの指導状況等について記入する。
  2. 本日の職場ミーティング、個人面談の内容―職場ミーティングは週1回各60分程度行っている。テーマは5Sの取組みである。ドライバーとは順番に個人面談をしている。こうした職場ミーティングや個人面談の内容について記入している。
  3. 本日の5Sの取組み状況―職場ミーティングのテーマが5Sの取組みであるので、日々について記録している。車庫、ドライバーの休憩室、事務所、社有車、トイレについては掃除当番表に基づいて行っている。毎日必ず5Sに取組むこととしている。
  4. 明日の活動予定―荷主訪問予定、ドライバーの個人面談の予定、あるいは経営データの作成予定等について記入する。明日の活動イメージを確認することとしている。明日必ずやらねばならないことを刻みつけることである。
  5. 各種管理項目―整備関連として車検、3ヶ月点検、オイル交換、エアフィルター、修理について記入する。営業については、営業情報について1日1件必ず書くこととしている。軽油量は本日購入量を記入して、累計を把握して軽油経費を算出する。
  6. 統括(本人)コメント―1日を振り返ってどうだったか。あるいは社長への連絡事項を記入する。字数にして100~200字程度であるが、1ヶ月分の累計となると4000字~5000字分となる。日々記録として活用している。管理者の日記である。
  7. 社長コメント―毎日送られてくる管理者日報に目を通す。指示や励まし、あるいは営業情報を記入する。「塵も積もれば山となる」毎日の積み重ねによってコミュニケーションを良くしていく。

管理者日報は継続していくことで、社長と管理者の報連相レベルを鍛えていく。管理者にとっても「毎日書くのは面倒臭い」「文章を書くのが嫌だ」等、色々抵抗がある。そこを乗り越えていくことで社長と繋がっていく。更に日々の記録は基本行動の実践記録である。別の見方でいえば、管理者自身の教育実践でもありドライバーの人材育成の記録でもある。コミュニケーションをよくしていく“しん”として、管理者日報を活用している。

【2】経営実績報告書の活用

管理者日報に基づいて経営実績報告書(表2参照:PDF12KB)を活用している。経営実績検討会議が月1回ある。その度に管理者が発表する資料が経営実績報告書である。

  1. 安全―交通事故やクレーム・トラブル件数の内容について報告する。原因についてもはっきりさせて防止の為の対策について記入する。個人面談の内容が裏付けとなっている。
  2. 経営―売上や利益はどうだったか。目標対比、対前年比に基づく。目標と実績とのギャップについてしっかりと見据えていく。「どうして未達だったか。これからどうしていくか」コスト分析は修繕費、燃料費、有料代を3大コストとして行っている。日々のコスト削減の取組み記録が管理者日報である。
  3. 人材―退職者や新入社員を記入する。現行人員を報告して人員の不足がないか、不足があるとすると募集をどうするか、明確にしていく。その上でコミュニケーションの取組み(職場ミーティング議事録、個人面談実施記録)を発表する。管理者による人材育成取組みの記録である。
  4. 自己啓発―1ヶ月の間で、どのような本を読んだのかを発表する。1ヶ月1冊の読書をすることが、A社の管理者には社長から課されている。ジャンルは自由である。図書費は会社負担である。「本を読むのは苦手だ」とこぼす管理者もいる。「学習欲のある個人がいれば会社は成長する。せめてどんなに忙しくても、月1冊はまともな本を読んでほしい」。社長の願いである。更に外部研修を受講した際は、報告することとしている。まとめとして本人コメントがある。1ヶ月の感想や次月の決意、目標を記す。経営実績検討会議にて管理者は発表する。その上で社長はコメントを記して次月に繋げていく。

管理者日報と経営実績報告書は、管理者の人材育成の実践ツール、生きた教材である。座学のみではなく、職場の現実から学んでいく為の人材育成のツールである。コミュニケーションをよくしていく中で、管理者を鍛えていく。

以上