「人を活かす、経営に活かす」第50回
~ 職場風土活性化事例-評価システムの確立 ~

物流業の毎日は慌しく過ぎていく。A物流業も例外ではない。管理職といってもデスクワークばかりではない。ドライバーが急に当日休んだりすると、欠員補充で管理者自ら乗務する。繁忙シーズンとなると現場の一員として奮斗する。経営管理(マネジメント)がなされていない。経営管理とは、目標を立てる→実行状況をチェックする→目標と実績の差について要因分析する→要因分析に基づいて対策を立てる→対策に基づいて実行する。こうしたマネジメントサイクルを回すことにある。マネジメントサイクルの中心軸はコミュニケーションの仕組みである。コミュニケーションの仕組みは、毎日の5分間ミーティング、月次の実績検討会議、プラス1人1人のドライバーへの日々の声かけ(働きかけ)、個人面談等の仕組みである。マネジメントサイクルをしっかりと確立することで人材が育つ。机の上の耳学問、座学のみでは修羅場で逃げずに立ち向かう勇気のある人材は育たない。人材は現実の仕事の中から鍛えられていく。だからこそマネジメントサイクルは必要である。ところがA社の状況はどうか。管理者は1日を乗り切るのが精一杯、ヘトヘトになる。繁忙シーズンになると、その日のうちに家に帰れないこともある。目標はどこにいったのやら、である。ドライバーはどうか。放任されている。挨拶をしてもしなくても管理者は何も言わない。身だしなみチェックもおざなりとなっている。車の清掃もドライバーによってバラつきがあり、してもしなくても管理者からのアクションがない。「どのようにしてこうした職場風土の状況をチェンジして、活性化していくか」。

(1)評価システムの確立―管理職評価表の活用

ネジメントサイクルの中心軸にコミュニケーションの仕組みを据える。その上で評価システムを確立する。管理職評価表(表1:PDF12KB)の活用である。事例では評価項目は月次の売上計画の達成率、月次の所属部門の営業利益の達成率がある。経営数値目標値である。経営目標数値の設定にあたっては、社長と個人面談をして決める。「所属長と個人面談をして、目標を共有化していくことが大切ですね。管理者が現場要員に成り下がってしまっては本人の成長もないですしね」。社長の言である。個人面談にあたっては、荷主別のデータ、対前年データ等資料を揃えて行うこととしている。経営数値目標は1日単位、1人当たり、1時間当たり、1台当たりと原単位までブレークダウンしていく。原単位の目標数値は分かりやすさを心掛けて、全員(アルバイト、パートも含む)に周知(社内掲示板に張り出す、朝礼で発表する等)していく。さらに評価項目としては交通事故・クレーム件数、個人目標管理シートの達成評価、個人の総合的実績評価がある。それぞれにウエイトをつけて満点で100点としている。交通事故・クレーム件数については、A社では運輸安全マネジメントを実施している。運輸安全マネジメントの目標に交通事故・クレーム件数が設定されている。

(2)評価システムの確立―個人目標管理シートの活用

社での個人目標管理シート(表2:PDF19KB)の事例について紹介する。目標の具体的内容は5項目(満点100点)である。①新入社員教育マニュアルに基づいた教育の充実を図る。ドライバーの定着と物流品質の向上を目指す②デジタコ管理にて急加減速とスピードチェックにてE、Dランク者をなくす③車両を綺麗にする④無駄な修理を防ぐ⑤使用した物は元に戻すようにレイアウト表示をし、無駄のない作業環境を作る為、点呼ミーティングで徹底を図る。目標の具体的内容について、達成度の判定基準をあらかじめ数値として明確にする。目標達成の為の具体的な行動内容を記入する。事例では①と②の目標に対して15点程キメ細かく設定している。③は2点、④は4点、⑤は3点で全体で24点に及んでいる。個人目標管理シートは月末に本人総括し、社長が評価する。その評価点数は前述の管理職評価表に反映していく。

(3)評価システムの確立―個人の総合的実績評価について

個人の総合的実績評価は、能力評価と情意評価がある。能力は専門知識の獲得、活用状況、コミュニケーション能力(職場のメンバーと良好な関係を図り、リーダーシップを発揮する力)、問題解決能力(担当職務に関する問題を発見でき、解決案を立案し実行する力)のことである。情意評価とは、本人の姿勢として積極性、規律性、責任性、協調性がみられるかどうかである。こうした個人の総合的実績評価についても前述の管理職評価表に反映する。

評価システムの確立は一律平等主義の打破である。一律平等主義とは「やってもやらなくても一緒」からの大転換であり、裏を返せば悪平等という不公平な職場風土からの転換である。人材育成は職場の現状に対して目標を正しく設定して、日々月次とチェックしていくことでなされていく。職場風土の活性化は、緊張感のある職場でなくてはならない。評価システムの確立への挑戦の1歩1歩によって、職場は活性化していく。

以上