「人を活かす、経営に活かす」第42回
~配車担当者の人材育成取組み事例~

ドライバー人材育成にとって、配車担当者の果たす役割は大きい。配車担当者は運送会社にあって花形部門である。配車のやり方によって売上に差が出てくるし、ドライバーのやる気にもかかわってくる。配車担当者の育成プロセスは、ドライバー育成のプロセスでもある。

(1)A社の配車担当者育成事例

A社では、優良な配車担当者不足に悩まされている。ドライバーの中から引っ張ってきてもなかなかうまくいかない。確かに業務内容は熟知していても(例:地図が頭に入っていること等)、ドライバーとの人間関係がうまくいかない。配車への不満がストレートに浴びせかけられる。そのうえドライバー時代より給与が変化している。ドライバーの時は走れば走るほど給与に反映していたが、配車となると給与は固定である。「とてもこれ以上配車を続けることができません。もとのドライバーに戻してください」となるパターンの繰り返しである。

①ドライバー評価ポイント表の活用
配車担当者にドライバーの給与を決定する権限を持たすこととする。ドライバーと同一の土俵では、配車への不満がストレートにくる。更には人間関係もしっくりこなくなる。そこで配車担当者にドライバーの給与決定にかかわらせることとする。A社では(表1:PDF95KB)のドライバー評価ポイント表を活用している。1点単価を500円とし、満点で50,000円である。
ドライバー評価ポイント表は、ドライバーの人材育成という観点から成り立っている。項目について説明する。

A:会社決定事項の協力姿勢-A社ではトイレ清掃や会社の行事、会議の参加は会社の決定事項としている。その上、グリーン経営に取組んでいるので燃費効率向上への取り組みも必須である。点数評価をもとに給与支払日に個人面談をする。個人面談によってマンツーマンの指導を行っている。

B:運転技術能力-配車時間の短縮への取組み具合、アイドリングストップ活動への協力度合等についてチェックする。

C:配車貢献度合-休日出勤や残業対応は、気持ちよく協力しているか。荷主の要請で休日対応しなくてはいけないこともある。進んで協力してくれるドライバーがどうしても必要となる。

D:会社指示に対する理解度-閑散期対応として、社内清掃やグリーン経営の研修を行うこととしている。更に運転日報の正確な記入も必須である。その上、会社から様々な指示がある。とりわけ配車方針に従うことは最重要事である。

ドライバー評価ポイント表の活用は、配車担当者がドライバーの給料を下げる為にあるのではない。むしろ上げる為である。毎月評価し、給与に反映していく。こうした取組みはドライバー育成のみならず、配車担当者がレベルアップしていく。単に配車のみということにとどまらず、労務管理、経営へとコミットしていくことになるからである。

②配車担当者の成果配分ルールの確立
「ドライバー時代は走れば走るだけ給料に反映していたのになぁ」配車担当者の嘆きである。固定給ということで、残業しても休日出勤しても給与は変わらない。そこでA社では6ヶ月単位で収支を把握し、算出された営業利益額の一定割合を配車担当者の業績賞与として支給することにする。成果配分ルールの確立である。経営数字を公開することで配車担当者に刺激を与え、「やってもやらなくても一緒」との無気力状態から転換させる。運送会社の花形は、経営の中核でもある。今までA社では花形どころか配車部門は苦役部門で、苦労のみ多くて割の合わないところとの意識があった。こうした意識の大転換として成果配分ルールを確立することとする。

③配車担当者の能力アップ取組み事例
一日中会社にいて、ばたばたと過ごす。電話応対に明け暮れたり、荷主からのクレーム対応で冷や汗をかいたりする。一日終わって「やれやれ」。果たしてこうした日々の繰り返しのみで配車担当者は能力アップするであろうか。A社では(表2:PDF:26KB)の通り、配車担当者に外部研修に参加させて、研修レポートを提出させている。研修内容で学んだことについて記入する。あるいは一緒に研修に参加した人とどれくらい交流できたかを記入するようにしている。月1回は外部研修に参加することとしている。広い視野を持つことも大切である。すぐに自社に活用できないことでも、いつかは役立つこともある。同業他社の人との交流では仕事に活かせることもある。

「向上心を持つことが、人材育成のポイントですね。人も企業も成長したいという向上心があってこそ活力が生まれてくるのですね」A社長の言である。向上心は現場の中から育まれていく。向上心のある配車担当者がいてこそ、ドライバー育成は実のあるものとなる。

以上