「人を活かす、経営に活かす」第23回
― ドライバー人材育成取組み事例11 ―

「求人誌でドライバーを集めようとしているが、どうも反応がない。今までだと電話での問い合わせが1日10件はあったが、1日1件あればいいほうだ。ドライバーはどこにいったのか」。中堅物流業のA社長の嘆きである。  確かに少子高齢化の波がある。日本の若者は、物流業界に魅力を感じなくなっているのかもしれない。「どうすればいいのか」。A社長は悩む。

(1)挨拶で会社を変える事例

● 入車式と廃車式

入車式とは、新車が入ってくると全ドライバーが参加して行う。全ドライバー(仕事で参加できない者は除く)がキチっと整列して大きな声で挨拶する。「よろしくお願い致します。安全第一!」と声を出し、二礼二拍手一礼する。その後、社長が担当運転手に車のキーを渡す。「安全第一、しっかり頼みます」。担当運転手は「はいっ」と受け取る。廃車式は廃車のときに行う。全ドライバーが参加して「ありがとうございました」と大きな声で挨拶する。担当運転手は謝辞を述べる。「雨の日も風の日もいっしょに働いてくれて、ありがとうございました」。

A物流企業では挨拶運動によって、事故の大幅減少を成し遂げている。働く者の心の持ち方を前向きにしていく力を挨拶は秘めている。気持ちの良い挨拶は、企業と人を成長させていく原動力となる。何よりもコミュニケーションが円滑化する。コミュニケーションを良くするためには、何よりも挨拶の実践である。「ありがとうございます」という感謝の心、「はいっ」という素直に受ける心、「おはようございます」という人間関係を良くする心・・・こうした心を込めていくことが、コミュニケーションを良くすることに繋がる。挨拶運動は元手(お金)のいらないすぐできることである。気付くことですぐできる。企業を活性化させ、人材育成を実現する大原則である。「不況、不況」といつも嘆いていて「心の不況」になってはならない。「心の不況」を乗り越える力が挨拶にはある。

挨拶運動の成果について、ホスピタリティサービス度合チェック表( 表1参照:PDFファイル99KB )を活用している。6~7人の小集団を編成し、チームリーダーを任命して行なっている。小集団活動のひとつとして取組んでいる。車を大事にする=愛車の気持ちを挨拶に込めているのが、入車式と廃車式である。こうした実践の積み重ねがホスピタリティサービスの向上となる。小集団グループで相互にチェックすることで、ホスピタリティサービスのベクトルを合わせていくことになる。チェックは月1回と定例化し、具体的事実に基づいて行なっている。次月の改善項目を明確にしている。個人目標を定めている。「大きな声でハイッと返事をします」とか「歩くときは小走りを徹底します」とかである。こうしたメリハリ、けじめを付けてP(計画)⇒D(実行)⇒C(チェック)⇒A(歯止め)のマネジメントサイクルを回している。

(2)点数制で査定し、物流品質を向上させる事例

経営に対してプラスになる働きマイナスになる働きとをポイントで表し、給与や賞与の査定に反映させている。頑張る人には相応の報酬を、ミスを犯した場合はペナルティーを与える制度である。

ドライバー、事務職、構内作業員など全社員参加で5名程度を単位にチーム(小集団活動)を結成。チームリーダーで構成されるチームリーダー委員会で評価を担当していく。

社員が顧客から高評価を得たり、効果的な提案をした場合(プラスの働き)、その社員の所属チームで【good報告書】を委員会に提出。よい意味での通報制度である。逆に交通事故・貨物事故・接客マナーの悪さ、誤配、遅配などのミスで顧客や会社に迷惑をかけたりした場合(マイナスの働き)は本人が【bad報告書】を自己報告する。報告がない場合は、やる気無しとみなし、ポイントによって厳しく罰せられる。

問題を個人レベルではなく、チームレベルで捉えて原因を究明し、対策を検討する組織を構築することが目的である。

事故を減らし、安全・確実というサービスを顧客にアピールすることができ、社員にとっては、働きに見合う評価・報酬を得られる制度である。

上記の表の通り、プラスの働き、マイナスの働きを本人に通知し、グループで物流品質の向上に取組んでいる。  今回の事例は小集団活動の展開事例である。個人でバラバラにするのではなく、チームとしての連帯感で人材育成を成し遂げていくことをねらいとしてる。ドライバーを職場に定着させていく試みでもある。

以上