荷主サイドからの物流会社を見る目が厳しくなっている。選別の時代が強まっている。
表1( 参照:PDFファイル83KB )は物流会社評価表の事例である。品質、環境、改善提案、仕事取組の評価項目で ある。評価項目に対して査定基準を設定している。評価ランクはグッド、ノーマル、イエロー、レッドの4段階である。イエローは「このままですと取引中止になりますよ」ということであり、レッドは「取引中止=退場」ということになる。荷主サイドでは3ヶ月に1回のペースで監査チームを編成して物流会社を巡回チェックしている。物流会社にとっては厳しい。「運賃も上げてくれない。むしろ下げられたままである。そのうえこの厳しさではやってられないよ。」と本音をもらす物流会社の経営者もいる。レッドとなると死活問題、生きるか死ぬかとなるので、死物狂いにならざるを得ない。
1.品質 | 輸送事故件数、金額、内容について査定する。3ヵ月の期間で査定される。物流会社のワースト1位から3位までが自動的に、イエロー通告される。結果で判定される。次の3ヶ月までに改善されずにそのままワースト1位から3位にとどまっているとレッドになる。グッドは上位1位から3位まである。1ヵ年続いて1位から3位であると荷主から表彰状と金一封が贈呈される。 サバイバルを荷主からしかけられている。レッド通告された物流会社の経営者云く。「本音を言えば運送業を辞めたい。好き好んで事故を多発しているわけでもない。この苦しさを何故荷主はわかってくれないのか。」 |
2.環境 | 物流会社のドライバーには目標燃費効率を設定して達成することを荷主は強く求めている。目標燃費効率の達成状況をチェックされ改善への取組みを要請される。「内政干渉もはなはだしい」と反発する物流会社の経営者もいる。しかし反発する経営者は「どうぞ我社の仕事からお引取り下さい」とばかりに荷主サイドから責めたてられる。「環境に優しい経営をするのは当然のことである」との正論の前に首うなだれるほかない。 |
3.改善提案 | 「君のところはここ3ヶ月に1件の改善提案もないね。本当に仕事をしているのか。」と強く指摘された物流の経営者がいた。彼は青くなる。「自分では言われたことを言われた通り文句も言わずひたすら早朝深夜仕事をしてきたのにこの言い様は何だ!」にもかかわらず、“泣く子と地頭には勝てない。”「わかりました。早速改善提案を出します。」 |
4.仕事取組 | 欠車を出すことは大問題となる。ドライバーの中には無責任、無自覚の者もいて、突然いなくなったり急に休んだりする。欠車を出しては大変とばかりに配車係をはじめとして、ありとあらゆる手を尽くして総動員する。それでも欠車することがある。「欠車するとは何事か。その為に傭車した分の傭車料金は負担してもらいますよ。できたら傭車料金の2倍の金額をペナルティに課したいところだけど今回は見逃すよ。」荷主の言である。 |
「物流会社評価表」は物流会社の経営者にとっては厳しい。「荷主の圧力、強権の表現ではないか」と反発する経営者にも一理ある。しかしそれでは何の問題解決にもならない。他責では問題解決しない。自力がポイントとなる。自力は現場力を高めドライバーの人材育成のことである。
表2( 参照:PDFファイル49KB )は行動チェック表である。チェック者は配車担当者とする。毎月行う。チェック 項目に従って個人面談する。個人面談では聞く姿勢に徹して質問する。個人面談での質 問項目は次の通りである。
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行動チェック表のチェック結果の背後(深部)にあるものを探っていく。これが個人 面談の実施である。チェック項目のそれぞれは難しいものではない。当たり前のことである。出来て当然のことばかりである。当たり前のことを当たり前に行うことが現場力の向上である。出来ていないとするとどこに原因があるのか。個人面談によって質問することで探っていく。
荷主からの物流品質向上へのニーズは大きい。基本中の基本である。それには自らが気付いて自助努力によって取組むことしかない。とりわけ経営者の姿勢が問われてくる。経営者がドライバーの人材育成をしようとの熱い想いをかきたてていくことである。かきたてるだけではなく実践していくことである。荷主からの厳しい要求は“天の声”“神の声”と受け止めて、ひたすら物流品質向上に取組む姿勢が求められている。
以上