「人を活かす、経営に活かす」第11回

班長を育成する

A社では6~7人のドライバーをひとつのグループにして班長を任命している。ドライバーは放っておくとすぐバラバラ、孤立しやすい。その上、報連相がとりにくい。しかも基本の徹底(挨拶、しつけ、マナー等)が徹底しにくい。そこで現場のなかから班長を任命して基本ルールを徹底させていく。基本ルールは次の通りである。

  1. 身だしなみ(制服・制帽・安全靴・名札等)の確立 
  2. 車輌をピカピカにする。(洗車(内と外)、荷室、不必要な装飾)
  3. 酒気帯び厳禁
  4. 免許書チェック
  5. ケンカや指定外での喫煙はしない。

この1~5を基本ルールとして徹底させていくのが班長の役割とする。
その為にA社では班長に行動目標( 表1参照 PDFファイル:143KB )を書かせる。表1の事例では行動目標を

  1. 職場風土の活性化
  2. 信賞必罰
  3. 物流品質

という項目ごとに設定している。

(1)行動目標 (班長)

Aさん-入社30年のベテランドライバーである。職場風土の活性化として5Sをとりあげている。その為行動計画として日々5Sチェック表を作成し各人にチェックさせる。それをベースとして班ミーティングを行なっている、Aさんのモットーは「チームワークが安全一番」出来るだけ声をかけあって仕事を進めている。

Bさん-2tの集配ドライバーである。ホームの整理、整頓を心掛けている。率先して行っている。面倒見も良く、缶コーヒーを班員1人1人に手渡して週1回30分~60分「コーヒーミーティング」と称して班員の声を聞いている。「缶コーヒー代に1ヶ月5,000円使いますが、これも班長の役目ですよ。」

Cさん-作業班の班長である。経費の節減として電気代(光熱費)に取組んでいる。昼休みには不必要な蛍光灯を消す。かつ蛍光灯の本数を減らす。班員からのニックネームはケチオヤジと言われている。それでもCさんはニコニコして云く。「職場の中では一人ぐらいはケチオヤジがいなくてはなりません。私がその役目をになっているのですよ。」

Dさん-Dさんは職場の中で挨拶一番を目指している。班員には挨拶の仕方を熱心に教えている。「おじぎをするときには心の中で1,2,3と数えて3で頭を挙げていく。そうすると正しい挨拶になるよ。」挨拶を大切にすることはお金を一銭もかけない設備投資だと信じている。

Eさん-きれいな職場づくりの一環としてEさんの班ではトイレ掃除を行っている。班員が交代してあたる。最初は大きな反発にあったが。(仕事をしにきているのにトイレ掃除とは何か!)今では一人一人が実行している。Eさん云く「トイレを磨くということは心を磨くことになる。安全第一につながる」

Fさん-経営数字(個人別収支)をベースとして班員に語りかけている。経営数字(個人別収支)は公開されているので黒字、赤字の損益分析を行っている。特に燃費効率は班員自らが集計している。そうすることで燃費向上への意欲づけを行っている。

以上がAさんからFさんの行動目標のエッセンスである。ここまでの班長を育成するのは一朝一夕ではない。A社トップの「継続は力なり」の強い意志なくしては班長制度は魂が入らなかったといいうる。A社トップは報連相を経営での最優先事項としている。そこで班長にも月次報告書( 表2参照 PDFファイル:103KB )を提出させている。

(2)月次報告書(班長)

月次報告書( 表2参照 PDFファイル:103KB )は班長にとって報連相の中心事項である。月末で締めて2日以内に提出するのがルールである。月次報告書をはじめた頃は7日以内としていた。7日以内ですら提出期限を守れな者が続出した。そこで繰り返しA社トップは働きかける。班長の中にはいやがる者もいる。「班長を辞めさせてくれ」という者までも出てくる。「継続は力なり」でA社トップの執念は実り今ではシメて2日以内、全班長が提出期限を守っている。月次報告書の項目は車輌管理、車輌備品管理、服装・挨拶、安全運行、安全作業、健康衛生、作業トラブル、班員提案、伝達事項会議関係と10項目からなっている。必ずそれぞれの項目について実施したこと、あるいは計画していることを記入する。その上で班長コメントを記入する。( 表2参照 PDFファイル:103KB
事例では燃費効率向上キャンペーンについてコメントしている。ここのところ軽油価格のアップは異常である。グングンとアップし対前年比20%アップとなっている。班員一人が月間で10,000円節約すると班員メンバー6人で60,000円、年間720,000円となる。A社の経営利益率は3%なので720,000円÷0.03=24,000,000円となる。2400万の売上をあげたことに等しくなる。(月200万)“今こそ燃費効率を上げていくこと”これが全社キャンペーンとなっている。

A社では班長制度を確立することが現場の物流品質の向上のキメ手としている。班長が行動目標を持ち、月次報告書を作成していく。地道な取組みである。「現場には改革の為の宝がたくさんあります。宝を眠らせたり、埋もれさせたりしてはなりませんよ。その為に班長を育成するのです。」A社トップの確信である。

以上