「人を活かす、経営に活かす」第07回
― サブタイトル ―

5S表彰制度について

表1( PDFファイル:26KB )の5S表彰制度について紹介する。5Sとは整理、整頓、清掃、清潔、しつけのことである。物流品質向上の決め手が5Sである。ポイント集計によって行う。1ポイントあたりの単価を100円としている。その上、上位1~3位までは会社が別途表彰する。(1位20,000円、2位10,000円、3位5,000円)毎月実施する。実施の方法は本人がまず自主申告し、その上で直属上司が査定する。最終決定は査定会議を開いて決定する。査定会議の議長は社長である。ポイント項目は10ポイント設定する。評価基準はS、A、B、C、Dの5段階としそれぞれにプラスポイントとマイナスポイントがある。評価する上で数字の設定(指数数値)と評価基準ルールを明確にしている。マイナスポイントが上回るとペナルティとして罰金が課される。マイナスポイントが上回ってきた時のマイナスポイント点数は1ポイント当たり1,000円としている。評価項目は次の通りである。

(1)挨拶、服装、マナーについて

明るく、大きな声で挨拶しているか。服装をはじめとして身だしなみはキチンとしているか。髪の色はどうか。チェックリストに基づいて評価する。注意されるとマイナスポイントがつく。

(2)納品精度について

納品トラブルについては事故報告書に基づいてチェックする。「全くない」が当たり前である。件数と内容によってマイナスポイントを決めていく。

(3)出勤率について

所定労働日数だけではなく会社が指示した出勤日(休日、深夜等)について出勤率100%でSである。遅刻、早退はマイナスとなる。

(4)洗車、車の点検について

愛車チェックリストに基いて行う。洗車の手順と回数はルール通りであるか。点検マニュアルに沿って行っているか。

(5)提案件数

1ヶ月で2件以上の業務改善提案でSとする。積込み積卸しの効率化提案や5Sの進め方の提案でも何でもOKである。会社指定の提案用紙を使用する。

(6)チームワークについて

他人の積込みについても自分の余力があれば積極的に行っているか。配車指示には素直に従っているか。

(7)コスト削減について

燃費については目標燃費効率を一人一人のドライバーが自覚している。デジタコを導入している。デジタコ評価AでSとしている。

(8)本人の不注意による車両故障について

点検基準、マニュアルに沿って行っていれば本人の不注意による車両故障は発生しない。エンジントラブルが本人の不注意によって発生しエンジンのオーバーホールで何十万と修繕費が余分にかかる

(9)職場ミーティングについて

職場ミーティングの出席状況をチェックしている。職場小集団活動の取組み状況をチェックしている。

(10)荷主開拓について

荷主開拓情報カードの提出月1件でSとしている。セールスドライバーとしての自覚を持つようにしている。

5S表彰制度は信賞必罰によって運用されている。上位に入ることはドライバーにとって励みとなる。反対にマイナスポイントによって1ポイント1,000円×マイナスポイントの罰金はドライバーにとって不名誉となる。罰金リスト(金額と氏名)が公表される。マイナスポイントドライバーは添乗指導の対象者となる。上司から添乗指導をうけることでプロドライバーとしての原点を確認することとなる。添乗指導表は表2(PDFファイル:42KB )の通りである。添乗指導項目は①~⑪となっており添乗指導マニュアルによって定められている。添乗指導者は総評と個人面談指導内容を記入する。

個人面談のやり方についてはコーチングというコミュニケーションスキルを活用している。コーチングとは「ある人間が最大限の成績をあげる潜在能力を開放すること。その人に教えるのではなく自ら学ぶように助ける事」と定義されているコニュニケーションスキルのことである。添乗指導者はコーチとしてよく聞くこと、質問する力をつけることを心掛けている。個人面談のプロセス(通常で20~30分)の中でドライバー本人自らが気付き学んでいくことを狙いとしている。

5S表彰制度の実践の成果はめざましいものがある。なによりもクレームトラブルが激減する。働くことの意味を一人一人が発見していく。単に苦役として嫌々働き、時間と体力を売るのみといった考え方からの大転換をもたらしていく。物流品質向上の本当の意味を染み込ませ分からせてくれる。しかもマイナスドライバーをそのまま放置するのではなく添乗指導によって再教育していく。5S表彰制度は現場で取り組む人材育成の実践、しかも日々の積み重ねを大切にするものである。

以上