「人を活かす、経営に活かす」第53回
~ 業務日報活用事例 ~

物流業の日々は慌しい。荷主からのクレーム電話が入りバタバタと振り回される。「まだ荷物がついていないよ」。「荷物が破損しているよ。後ほど弁償してもらうから請求書を送るよ」。あるいはドライバーからの事故連絡も入ってくる。車両が故障したり、タイヤがパンクしたりとてんやわんやのこともある。その上、急にドライバーが休んだりして対応に追われる。物流業の日々は、一種の戦争である。

【1】業務日報の確立

A社の営業所はドライバー15台、傭車10台で運営している。日々25台の車両が稼動している。営業所長は業務日報(表1参照:PDF45KB表2参照:PDF36KB)を作成して本社に報告する。

(1)業務日報の目的
ライバーは運転日報がある。それでは営業所長(管理者)の日報はどうなっているのか。営業所長は、日々に追われて日報どころではなかった。その為、本社からは「報連相がなっていない」と指摘されていた。営業所長自身にとっても1日を振り返る余裕がなかった。そこで、「本社との報連相を良くすること」「所長自身が日々の記録をつけることで営業所の管理データとする」という目的で業務日報を確立する。

(2)業務日報の内容
以前は週報を本社に提出していた。週報の内容は1日分が2~3行で簡単であった。メモのようなレベルである。週報を改正して業務日報とする。業務日報(表1)は行動記録と行動予定である。

  1. 本日の活動報告は1日の動きとして営業活動報告、事故報告を記入する。営業日報と事故報告書の役割を兼ねている。
  2. 今週の活動予定は日々更新する。予定の追加、変更を記入する。
  3. 未決・相談事項は優先度と期限をはっきりさせる。
  4. 明日の活動予定について記入する。
    表1は1日の行動記録、行動予定として活用している。
    表2は日々の経営管理の記録である。
  5. は車両費、燃料費、配車の効率、日々の売上記録である。車両費の項目として車検の予定、3ヶ月点検、オイル交換、エアフィルターを取り上げている。日々記録することで、うっかりミスを防止する。車検スケジュールをきっちりしないと、不必要な休車をして売上に響く。3ヶ月点検は、つい見逃すことがある。オイル交換やエアフィルターは日々チェックしないと、修理費がかさむ元となる。燃料費の項目は燃費管理表と運転日報の差額をチェックして燃費改善に役立てている。配車の効率としては配車表をチェックする。日々の売上記録はタイムリーに掴んでいく。 業務日報の内容は、従来の週報と比して盛り沢山である。当初は「書くのが面倒くさいなぁ」と営業所長は思った。「どうして毎日こんなことを記入するのだろうか」と反発も覚えた。しかし、続けているうちに慣れてくる。仕事について計画性が出てくる。日々について、できていたか、できていなかったのかをチェックできる。「メリハリが出てくるとはこういうことですね」。営業所長の言である。
  6. は総括コメントである。1日を振り返っての反省にもなる。

(3)業務日報の運用
A社では業務終了前10分間程度、管理部門のミーティングを行っている。その際業務日報が役立つ。更に月1回の職場ミーティングの際に活用している。1ヶ月の活動の中で、日々どのようなことが発生していたか、経営管理データとしてドライバー全員に公表している。車両費はどの位発生しているか、燃費効率はどうなっているか等々の公表である。そして、どうすればコスト(燃料費、車両費等)が下がるのか考えていく。身近なところから考えていく。アイドリングをどのようにして減らすか、車の運転方法をどうするか(ブレーキの操作方法等々)―これらの1つ1つを職場ミーティングのテーマにしていく。その上、自らの稼ぎ(売上)についても公表している。稼ぎについては、日々の配車のあり方も意見を聞いていく。ワイワイガヤガヤと職場ミーティングをするのに業務日報は『しん』となっている。『しん』とは報連相の基本、支えという意味である。

【2】日々の大切さ

物流業は在庫がない。一瞬一瞬が勝負である。サービス業たる由縁である。“千里の道も一歩から”という言葉を、つくづく噛み締めさせられるのが物流業である。コツコツと積み重ねていく仕事である。それだけに日々が大切である。それだけに日々が大切である。今までの実績も1日の大事故で吹っ飛んでしまうことすらある。日々が重い。リスクを抱えて日々を生きている。リスクとは、事故・クレームに始まり、倒産リスクもある。ある日突然、会社がよみがえる。ドライバーの物流品質が一挙にアップする。こうしたことは、日々の積み重ねなくしては達成できない。業務日報は毎日の記録として充実しなければならない。報連相の『しん』として確立しなければならない。宝クジに当たるような一発大逆転を、物流業の経営にとってはあてにすることはできない。するべきでもない。やるべきことを確実に行い、一歩一歩踏み固めていく。“千里の道も一歩から”日々の大切さを噛み締めて実践していくことである。

以上