「人を活かす、経営に活かす」第46回
~営業活動実践事例~

「売上が前年同月と比して、じわじわと下がってきている。このままだと当社は赤字に転落する」。A社長は先行きに強い危機感を幹部メンバーに表明する。どうしたら売上をアップ出来るかが、A社の経営課題となっている。

(1)営業活動実践事例

  1. 営業日報の活用

    「日々の仕事の中でも隙間がある。1週間の中でも1日2~3時間なら営業活動として荷主訪問できる時間は確保できる」。社長は幹部メンバーを説得する。このままだとじりじりと売上は下がる一方である。仕事がないということで、休車が発生している。ドライバーが給料を稼ぎたくても休車ではどうにもならない。しかも帰荷の確保も思うようになっていない。車の回転率、稼働率、実車率は前年と比して悪化している。運行効率の改善を図らねばならない。そこで営業日報(表1参照:PDF89KB)を軸として、営業活動をすることとする。日々の隙間を活用して、とにかく訪問する。営業成果項目は、ポイント集計する。項目内容は訪問件数、面談件数、キーパーソン面談件数、発掘案件件数、見積・提案件数、T/L件数である。件数1件で100円の「営業活動手当」を支給することとしている。(T/L件数は5件で1件分とし、100円としている)。すぐに成果のみにこだわることはしない。営業活動プロセスを重視する。その為に1件100円の「営業活動手当」を支給している。「金額の多い少ないよりは、支給することが大事です。幹部メンバーに対して、営業活動への取組みを促していく呼び水です」A社長の言である。業務内容欄は、営業活動のみでなく一日の活動を記入する。とりわけ成果がどれだけ上がっているかを記入する。来週の予定欄も記入する。1週間の内で、どの曜日が比較的営業活動に取組めるか予定する。営業活動に関するコメントも記入する。幹部ミーティングは、毎週金曜日にメールで行うこととしている。お互いの営業活動を情報交換している。顔を合わせての幹部会議は月2回行うこととしている。営業日報は毎日必ず社長に提出する。社長はどんなことがあっても、毎日日報には目を通す。そのうえで幹部会議にて、営業作戦の進行状況をチェックすることとしている。営業日報は月単位で先述の営業成果件数(訪問件数、面談件数、キーパーソン面談件数、発掘案件件数、見積・提案件数、T/L件数)を集計する。そのうえで「営業活動手当」の支給ということになる。

  2. 営業情報カードの活用

    5人の幹部メンバーの営業活動を支えるものは、営業情報である。とにかくガムシャラに活動しようとしても、行き当たりばったりではどうしようもない。そこで営業情報カード(表2:PDF59KB)を活用する。営業情報カードは、全ドライバーに提出を呼びかけている。1枚の提出で100円としている。1枚の営業情報カードで100円となると、ドライバーの中にはせっせと提出してくる者もいる。1人で10枚ぐらいの提出者もいる。日常の仕事のなかで、その気になればいくらでも営業情報は転がっている。ドライバーが第1線の営業部隊へと変身してくる。営業情報カードに基づいて、幹部メンバーは行動する。たとえひとつの荷主で1個の荷物でも集荷することで、積み重ねによりいつしか100個にもなってくる。“小を積んで大をなす”である。A社の武器は、ドライバーの品質である。同業他社に負けない点は、ドライバーのやる気である。せっせと営業情報が集まってくる。全員の気持ちがひとつになってくる。“なんとしても売上をあげていこう”営業情報カードにより、仕事に結びついて売上になった場合は、社長賞を出すこととしている。営業活動成果を3ヶ月単位でまとめて、営業活動成果を集計する。集計結果はグラフ化して、職場の掲示板に貼り出す。社長賞は営業成果を5ランクにランク付けする(A、B、C、D、E)。営業情報カードの提出者にも社長賞は配分される。このままだと売上はジリ貧化する一方である。周りの経営環境のせいにするわけにはいかない。厳しさに直面しているのは、どこの運送会社も同様である。こうした状況で危機を突破していく力は企業内部にある。企業内部、働く一人一人が気持ちをひとつにしていくことでパワーが出てくる。“底力”が出てくる。必ず売上はアップしてくる。

以上