「人を活かす、経営に活かす」第09回

中小物流業にとって深刻な経営状況が襲いかかっている。長引く不況、およそ10年に及ぶ運賃低迷で経営体力がボディブローの如く弱っている。そこへ軽油価格のアップである。毎月ジリジリと上がり確実に20%は対前年比でアップしている。どうしてこの経営状況を乗り越えていくか、ヒシヒシと危機が深化している。今回は職場小集団活動の実践による物流品質向上への取組みについて述べることとする。危機突破のキメ手は全員の気持ちを一つにして知恵を出し合っていくしかないからである。

(1)物流品質向上の取組み体制をつくる物流センターでの職場改善事例

現状の仕事の仕組みを抜本的に見直すことを目的として取組み体制をつくる。日常業務に携わる管理職・社員・パート・アルバイトの参加を得る。10人までの職場小集団を編成する。リーダーを任命する。期間は1ヶ年とする。トップの物流品質向上方針をよく理解する。その上で「物流品質向上目標管理シート(PDFファイル:12KB )をメンバーとの話し合いのうえ作成していく。目標は成果目標とプロセス目標に区分する。成果目標は具体的な達成レベルを設定する。表1(PDFファイル:12KB )の例では燃費効率向上、延着ゼロ、荷主クレームゼロを掲げている。ウエイトを付ける。目標達成のための具体的行動目標と実績判定の基準を設定する。評価対象期間は6ヶ月とし、グループ自身が評価し1次、2次と上司がチェックして査定会議にて評価決定していく。プロセス目標は成果目標項目と連動して行動内容をチェックしていく。

(2)職場小集団活動の展開

「物流品質向上目標管理シート」の作成に基づいて職場小集団活動を展開する。手順としては次のように進める。

  1. 現状分析→問題点の整理→改善計画の作成→対策の実施→仕組みの定着
    現状分析は仕事の仕組みの現状を把握する。その上で物流品質の実態を掴む。タイムスタディによる仕事の中味、仕事の流れを分析する。荷主ごとの物流品質の問題点を掴むことも重要である。現状分析の進め方は現場スタッフのヒヤリングが大事となる。

    問題点の整理をする。何が問題かと同時になぜそうなっているか原因を掴むこと、個別でなく全体的な視野から問題を整理し、真の原因を分析することが重要である。原因なくしては本当の解決にならない。

    改善計画の作成は課題を整理する。問題点が明らかになったら解決課題を明確にする。課題ごとの重要度、取組みやすさ、優先順位に基づいて重要点に取組むことである。そこで改善計画は課題ごとに担当者を決めて実行計画(目標・実施・手順・スケジュール等)をつくる。

    その上で対策を実施する。効果を職場ミーティングで確認しながら、着実に進める。

    仕組みとしての定着は文書化(マニュアルの作成)である。

  2. 職場小集団ミーティングの実施
    上記の手順は職場小集団ミーティングによって進める。職場小集団ミーティングの進行マミュアルは表2( PDFファイル:22KB )参照。全員起立して挨拶訓練からスタートする。出欠の確認をする。特に欠席理由は詳しく確認する。物流現場では多忙のせいで毎回欠席メンバーが固定する場合もあるからである。前回ミーティングの内容を議事録に基づき確認する。目標に対しての成果を自己評価していく。前回ミーティングからグループとしての実績をデータとして提示する。その上で問題点の整理、課題の明確化を一人一人のメンバーが行い次回までの目標を決める。次回までの個人目標を記入する。以上の流れを60分で行う。

  3. 全員参画の経営体制をつくる。
    「ここにいるみんなはお金だけで繋がっているのか。バラバラではないか。これではダメだ。“私の職場”ということで一体感を持とうではないか。」ある小集団活動でのことである。ドライバーの一人が発言した。長引く不況で賃金は上がらない。それどころかここ10年ずっと給料はジリ貧とのこと。そこで上記の発言となった。お金だけで繋がるのではなく、心で繋がろうという発言である。“私の職場”を愛そうではないかとの発言である。具体的には掃除キャンペーンをやろうということである。車はいうまでもなくトイレも順番を決めてピカピカにしようということである。一体感ということは全員参画による経営体制のことである。正に職場小集団活動の実践による物流品質向上への取組みとは、全員参画の経営体制づくりである。お金だけで繋がるのではなく、心で繋がっていくことである。そのためには経営情報の公開が必要となる。オープンな職場づくりである。身近な経営情報は燃費効率やクレームトラブルの内容(物流品質レベル)等は第一歩となる。職場小集団活動の実践は別の切口からすれば、現場で取組む人材づくりのことである。現場の問題点から課題を明確にし、それへの具体的対策について知恵を出し合うこと。これが人材育成に繋がることとなる。

以上