「人を活かす、経営に活かす」第04回

物流品質向上は入社時の教育とメリハリをつけること、言い換えれば賞罰制度の確立がポイントとなる。

(1)入社時の教育事例

ここのところ運賃低下によって経営が厳しい。その為賃金水準が上昇していない。上昇どころか低下している。そのせいか乗務員に応募する者のポテンシャルが低く、やる気の感じられない者が目立っている。「する事ないから仕方なくハンドルでも握るか。」と言った応募動機の乗務員である。そこで「誓約シート」(図表1:PDFファイル38KB)を活用する。入社にあたって誓約シートを読み上げて「はい。いいえ。」で確認していく。すべて「はい」と誓約しなければならない。その上で「誓約書・身元保証書」(フォーム:PDFファイル20KB)を提出させる。こうした手順のねらいはどこにあるか。誓約シートは基本動作を確認している。挨拶・服装・マナーの確認である。更に安全面、健康面について念を押している。実際に「はい」と誓約するプロセスが入社時の教育の“初めの第一歩”である。運転免許証さえあれば何とかなると思っていることに対して意識変革を迫っていく。労務トラブルの大半は会社側の説明不足にある。労務トラブルの一つ解雇問題について会社側がキチンと説明していれば、ここまで揉めなくてもよかったのにと思われるケースが多い。例えば、挨拶もできない。クレームが多発する。事故を繰り返す。このような質の悪いドライバーを解雇しようとすると“初めの第一歩”=「誓約シート」(図表1:PDFファイル38KB)の活用がポイントとなる。その上で「誓約書・身元保証書」がものをいってくる。労務トラブルの一つ事故ペナルティについても「誓約書・身元保証書」によって特殊なケースは別として大半は揉めることはない。特殊なケースとは裁判にまで発展するような労使激突のことである。「私は当社の事故ペナルティ制度に同意し、万一事故を起こした時は事故ペナルティ制度に従います。」と誓約しているからである。

(2)賞罰制度事例

褒めることと叱ることのバランスをうまくする。これは人材育成のコツである。安全職場を確立する目的で実施された賞罰制度事例を紹介する。

  1. 表彰制度
    事故削減に貢献した者を表彰する。事故の定義は次の通りである。

    イ. 会社の車両を破損
    ロ. 他人の車両を破損
    ハ. 車両により建物、器物を破損
    二. 車両により人に被害を及ぼした時
    ホ. 商品の積込中、搬送中、取扱中における破損、紛失
    へ. 納品時納入先の物又は人に損害を与えた時
    ト. 得意先におけるトラブル発生によるクレーム
    以上の定義に基づいてデータを取り、1ヶ年の期間において安全に貢献した従業員とグループを表彰する。従業員表彰は完全無事故且つ無遅刻無欠席者をリストアップする。その上で日々行動チェック表(現場で取組む物流品質向上その2参照)による各管理職の評価が優良である者としている。表彰金額は1人当たり10万である。一方、グループ表彰は年間事故発生件数が、前年度と比して30%以下に削減できたグループを対象をする。削減率に応じてグループ表彰金額を設定している。30%が30,000円、40%が50,000円、50%が100,000円、60%が150,000円、70%が200,000円、80%が250,000円。90%が300,000円としている。グループ全体で事故ゼロとなると500,000円としている。グループ員は平均6~7人である。事故の定義は前述の通りである。

  2. 事故ペナルティ制度
    交通事故に関しては保険免責分(10万)までは、本人負担とする。事故ペナルティ規定を作成して損害賠償することとしている。商品事故については弁金発生の場合、交通事故に準じて10万までは本人負担としている。その為には事故査定委員会の審議によって決定する。事故査定委員会は役員部門長、それに本人も加えて行っている。且つ事故の程度によって解雇処分、出勤停止処分、始末書の提出が事故査定委員会によって決定される。解雇処分は本人の責による死亡事故、重大な事故且つ飲酒運転、重大な荷主クレームが対象となる。

表彰制度と事故ペナルティ制度はセットである。コインの表と裏である。セットにして始めて物流品質向上、安全職場の実現が進む。やってもやらなくても一緒といったメリハリのない職場では人は育たない。褒めること=表彰制度、叱ること=事故ペナルティ制度が両輸となることで人財創りが現実化する。叱るだけでは萎縮する。オドオドする。そこで褒めることで認めていく。褒められることで良好なる自己イメージが育つ。自信がつく。このところ乗務員に応募する者のガッツが不足している。元気がない。熱意が感じられない。だからこそ入社時の教育“初めの第一歩”と賞罰制度によって活力を生み出していくことである。

以上