「人を活かす、経営に活かす」第01回
― サブタイトル ―

物流品質とは

物流品質とは何か。現象面では無事故(交通事故・労災事故・商品事故)、トラブルゼロ(破損・延着・誤配送・誤出荷)のことである。非現象面では5S、コミュニケーション(現場の風通し)、家庭・生活がキメ手となる。(図表1参照)

物流品質図表1
図表1

1973年に日本電産を設立し、連結売上高4,500億(2005年3月期見込)のグループを築いた永守重信社長云く「病は気からというが企業もおかしくなるのは社員の心や経営者の心情からだ。まず、心を治さないと会社は良くならない。」そこで取組むこととして整理、整頓、清潔、清掃、作法、しつけの6Sである。正に非現象面の5S、コミュニケーション、家庭、生活につながる。“人を活かす、経営に活かす”の原動力は物流品質である。物流業の現場での活力、優位性はしかとは目に見えないソフトの力である。ソフト力は物流品質である。

A物流企業の実践プロセスを紹介する。スタートは従業員意識調査である。

従業員意識調査

(1)目的
図表2の従業員意識調査表を活用する。(図表2:PDFファイル、113KB
目的は荷主に選ばれる会社創りにある。非現象部分(ソフト面)の実態を浮き彫りにしていくことである。調査項目はA.良い印象の挨拶、B.親切で丁寧な話し方、C.きちんとした受け答え、D.「声かけ」、E.明るくさわやかな接し方、F.あたたかみのある態度、G.清潔感のある身だしなみ、H.キビキビとした仕事への取組み、I.おもてなしの気持ち、J.仕事中の私語、K.マナー向上への学習意欲、L.ホスピタリティサービス度である。A物流企業での調査結果は、AからKの平均点は3.5、中でもD.「声かけ」3、J.仕事中の私語2.5、K.マナー向上への学習意欲が2.5と平均より低い結果となった。どうしてこうなったか。調査結果を分析して問題点を発見し対策を立てることである。その上、L.会社全体のホスピタリティ度については3と低い。そこでD.J.Kをテーマとして職場ミーティングを行うこととする。

(2)D『声かけ』3
「気に入らない同僚には挨拶なんかしたくない。」どうしてこうなるのか。よくよく実態を見つめていくと一種のイジメのようなことが行われていた。好き嫌いで「声かけ」に区別することがまかり通っている。そこで挨拶運動をしっかり行うこととした。朝礼で挨拶訓練を行う。ハキハキした声でメリハリのきいた態度で発声する。「おはようございます。」「いらっしゃいませ。」「お先に失礼します。」・・・。毎日毎日朝礼で順番に1人ずつ前に出て挨拶訓練をする。中には挨拶訓練が嫌で嫌で辞めていった現場スタッフ(パートの女性Aさん)も出た。パートの女性Aさんは「どうして仕事するのに挨拶が必要なのか。」と言って頑として聞き入れなかった。Aさんが辞めていったことで残ったものは返って気持ちが引きしまり、気合の入った挨拶訓練を行うようになった。

(3)J仕事中の私語2.5
暇なときについ気分がだらけてペチャクチャ私語をする。気に入った人とペチャクチャする。こうしたことが発生するのは業務マニュアルがしっかりしていないからだ。暇な時、いわゆる空き時間に行うことを決めておく。それは清掃である。トイレ当番、倉庫当番を決めてローテーションして取組むこととする。トイレの掃除手順を決める。ゴシゴシとピカピカにしていく。倉庫当番はフロアーごとにチェックリストを作成してゴミ1つほったらかしにしない。

(4)マナー向上への学習意欲2.5
マナー向上は心の制服である。マナー即ち作法は物流品質向上に直結する。言葉使いや電話応対のテキストを作成することとした。職場ミーティングにてメンバー全員の参画を得て項目ごとに作成していった。その中での身だしなみ手本書を紹介する。「帽子-まっすぐかぶっていますか。頭髪-指定色ですか。耳にかかっていませんか。スマイル-笑顔。アクセサリー-ピアス・ネックレスは外していますか。ヒゲ-きれいに剃っていますか。シャツ-色シャツ、Tシャツを着ていませんか。ボタン-開放厳禁。名札-名前が見えるようにつけていますか。ボールペン-決められた位置に入れていますか。爪-伸びていませんか。汚れていませんか。ズボン-汚れていませんか。シャツがはみ出していませんか。くつ-汚れていませんか。かかとを踏んでいませんか。」

トップの姿勢

従業員意識調査に表れた実態を改革、改善するのはトップの姿勢である。「日本企業の再生に必要なのは社員の心の再生、社員の心をつかんで変えるのがトップの役割」(日本電産永守重信社長)トップの姿勢は物流品質向上に大きく貢献する。ソフト面、非現象面の変革は粘り強く継続して取組むことで実を結んでいく。スタートは職場の実態を把握することである。その上で凡事徹底、当たり前のことを当たり前に行う職場創りである。

以上