vol.11

タクシーの運転手さんのグループが国を相手取って訴訟を起こしたらしい。聞くとこによると「給料が月額で大幅に下がり、ギリギリの生活状況に陥ってしまった。この原因は国家にある。国の規制緩和によってタクシー業界は競争が激しくなり、運賃は自由化され下がってしまった。しわ寄せをもろにかぶっているのが、タクシードライバーである。憲法で保障している生存権が、おびやかされている。国は責任を取れ。」ということらしい。

運送業に特化している経営コンサルタントとしては他人事とは思えない。深刻に受け止めるざるを得ない。確かに運送業界も規制緩和で競争が激しく運賃も低迷している。いわゆる年収300万以下のトラックドライバーはゴロゴロしている。確実に全国80万人のトラックドライバーは年収300万以下の恐怖に直面している。このことは国が悪いのか。経営コンサルタントとしての筆者は別の見方を持っている。ここのところトラックドライバーに参入してくるものの特長として一言で言って、やる気が感じられない者がいる。人生への前向きさがない。貯金もない。3度3度食事を取っているのか、あやし者もいる。何となく、ダラダラと日々の仕事をやり過ごしている。一種の引きこもりドライバーの出現である。果たしてこれでいいのか。

経営コンサルタントの仕事のひとつは、勇気を呼び覚ますことではあるまいか。確かに知識や技術、即効ノウハウも大切ではある。がもっと言えば、やる気を無くしている会社やドライバーに対して困難に自力で立ち向かう勇気を呼び覚ます触媒の役割がある。経営コンサルタントにふれたり、話を聞くと絶望がますます深まり暗くなるといったことではならない。むしろ自力でのナニクソ精神を刺激して、困難を力に変えていけるような触媒としての役割を果たしたいと念じる。率直に言ってそういう意味ではまだまだである。自分自身を更に鍛えていくしかないと決意する。

vol.12

経営コンサルタンティングに関わるニーズがあればどこでも行くというのがポリシーである。『北は北海道から南は九州まで』というのが、私のコンサルタントとしてのスロ-ガンである。山口百恵さんの歌ではないが、「日本のどこかに私を待っている人がいる」(「いい日旅立ち」)。

北の方では雪が降る。雪の降らない地域ではピンとこないが、雪の存在は重い。経営者の心情にも影響を与えている。『雪のあるうちは、じっとするしかない。春になってからあたらしいことを始めるよ。』とか言ったものである。確かに風土は人格を創るということはある。雪の降り積もるところは雪と共存していかねばならない。共存のための知恵がある。又一方、経済の波がある。地方は都市と比して景気は悪い。公共工事が減っている。商店街の店が消えつつある。大型スーパーのダイエーも撤退しているところが多い。かわりに郊外へと商圏が移動し、かつての中心街がさびれつつある。段々と地方の経済が弱まっていくさまを実感する。とこらが、街を歩いている若者は驚くほど共通化している。若者とは10代のことである。髪は染まっている。服装は全体がしまりなく見える。携帯電話をしっかり持ってる。道端にへたり込んでいるものもいる。どう見てもパッとしない。どうも気力とかガンバリが感じられない。地方の若者は都市を目指していない。この地で生き続けることを願っている。ところがそうはいかない。地方では就職するところも限られている。長男を除けばじっとこのまま地方にとどまることを許されない経済の現実がある。『青雲の志』をもって都会を目ざす日々は遠くなりつつある。やむ得ずしかたなく都会へと流入していく。どうもパワーの不足を感じてならない。パワーとは人生に対する心構えとしての前向きさ、やる気のことである。果たしてこの国はどうなるのか。どこへ向かっていくのであろうか。ところで、私は平成18年は定期的に(月1~2回)韓国の運送会社の経営指導に旅立つ。

vol.13

新刊本として『物流業の経営指導事例集』をまとめることができた。発売は平成18年3月を予定している。88の事例を取り上げている。事例とは各種マニュアル、経営フォーム、チェックリスト、各種契約書等のことである。事例ごとに説明文を付けている。今回の事例は『人』に焦点を絞って展開している。第1章から第11章までとしている。

第1章:給与改革
第2章:個人償却制
第3章:人事制度
第4章:目標管理制度
第5章:安全管理
第6章:職場小集団活動
第7章:社員教育マニュアル
第8章:就業形態に関する契約・運送契約・各種契約
第9章:コミュニケーション改革
第10章:経営方針書
第11章:人を活かす経営に活かす となっている。

構想は1年前からあたためていたが、なかなか最初の1ページに取り掛かることに踏み切れなかった。平成17年も押し詰まっての12月10日から12月23日までで完成した。毎日仕事の合間をぬって整理した。別の角度から見ると、筆者の経営コンサルタントとしての歴史をまとめた感がある。88の事例の表現には筆者は登場しないが、事例でもって自らを語っている感がある。省みて想うことは何か。物流業での『人』の重さである。『人』とは経営者、経営幹部、ドライバー、現業員等と物流現場で汗を流している『人』達である。『人』のやる気が経営活性化のキメ手である。筆者としては、経営コンサルタントとしての初心を思い出すことができた。初心とは何としても、お役に立ちたいとの使命感である。その為には学習力を高めていくことである。学習力は現場の中で鍛えられていく。まだまだこれからである。これからが本番である。

更に縁の不思議に想いたされる。あの時あの縁がなければ、今日の私は存在していなかったに違いない。自分1人の力で生きていると思うのは大間違い。生かされている。生かされている自分として何ができるか。それは仕事に打ち込む中でしか実現されない。一生懸命である。一生(人生)を命を懸けて取組むことである。

vol.14

平成18年(2006年)がスタートした。今年はどんな年になるだろうか。物流業にあってはいよいよドライバーの不足が深刻化するにちがいない。とりわけ25~34才の若手ドライバーの採用と育成が経営上のテーマとなる。 いわゆる若者は物流業に入っても続かない者もいる。「ケツをわる」タイプである。ドライバーという職に意義を見い出し「よしやるぞ」との想いで業界に入ってくるものが段々と減っているのではあるまいか。どうもその場限りで深い考えもなくヒョッコリというべきか、なんとなくというべきか、フラリと入ってくるものが後を絶たない。従って歩留りが悪い。そこで段々と高齢化が進む。すると無理がきかなくなる。高齢者の事故も増えている。如向にして若手ドライバーを確保し、育成していくかが経営上のテーマとなる。採用段階からキッチリとせねばならない。キッチリとは正しく面接する。入社にあたってはメリハリをつける。導入教育をする。生活面の指導をするなどの事である。正しい面接とは確認すべき事はキチンと行うこと。履歴書はよく見ること。適性検査をする。健康診断をするといったことである。入社にあたってのメリハリとは服務規律の徹底や、たとえ1人でも入社式を行うことである。このような基本に立脚することが物流業界に求められている。基本の立脚とは、言い換えれば人材育成への取組みのことである。ひるがえって、私の活動はここ5年ばかり悪化する収益に対してどう立ち向かうかをテーマとする日々の経営コンサルティングの連続である。一言で言えば生き残りである。果たしてこのままでいいのか。人材育成という基本、原点への取組みを強化しなければと痛感している。このままでは物流業界には人材が入ってこなくなる。危機感を持つ。今こそ“学習する力”を伸ばす時である。平成18年は“学習する力”を自分自身のコンサルティングのテーマとして深めて行く事を決意している。

vol.15

未知なことに取組むことは新たな発見がある。

私の場合は韓国語である。ここ1ヶ月ばかり毎日30分から1時間ばかりハングル文字と格闘している。正に格闘である。読んだり、しゃべったりできるとはとても想像すらできない。にも関わらず千里の道も一歩からと自分に言い聞かせている。かすかではあるが、いつしかわかるようになるのではないかと希望を持っている。一日の隙間の30分から1時間を捻出するにはどうするか。一つは夕刊紙や週刊誌を読まないことである。私はどうちらかというと活字中毒のところがあって、食事をしながらでも新聞を読みたいタチである。電車で移動中も寝る以外は何らかの活字がいる。そのせいか年間100冊程度の本は読んでいる。ところがこのペースがどうしてもその通りに進まない。ハングル文字のせいである。昔の人はよく言ったものである。『何かを得ようとすると何かを失う。』今のところハングルについては何も得ていないが、そのプロセス中ですら活字(夕刊、週刊誌)を捨てざるを得ない。夕刊や週刊誌を読む楽しさがなくなる。しかし一方未知なるものに取組むと今まで気にしなかったり、目に留まらなかったことがそうではなくなる。ハングルは結構街に氾濫している。新幹線にもある。こうしたハングルが目に飛び込んでくる。新たな発見である。今まで通りのやり方では見えなかったものが見えたりするのである。そうした視点からすると企業経営もしかりである。現状に安住していては見えないことがある。現状変革にチャレンジすることで開けていく世界もある。従って“脱皮しないヘビは死ぬ” ヘビは脱皮することで成長し、生き延びていく。企業経営も又しかり。

経営コンサルタントの役割として変革を促すということがある。変革のエージェントである。変革エージェントたらんとするからには自らも未知なものに取組むことがいる。今のところその一つが私の場合、ハングルである。