[2019/4/23]運命に抗する誓い
4月23日(火)
生きつづける精神― 事例A
(1)運命に抗する誓い
商圏である荷主は、運送業の代わりは幾らでもいる、と高をくくっている。会社の財産がない。これといって、確かなものがない。むしろ借金の重圧。働いても働いても、残るものは借金ばかりである。土地は借地、車もローン、事務所も賃貸、まさに行き詰まり。体力が財産で、その体力の衰えとともに、消えてなくなるしかないのか。
企業運営の目的をどこに定めるか。収益を確保することは当然である。もっと大事なのは、永続ということである。創業者がいて、2代、3代と続いても、いつしか消えてなくなるのが中小企業の一般的な必然であり、運命である。運命に抗して、永続するコツは何か。それは、“変革する志”を発揮することである。
「倒木更新」という言葉がある。朽ち果てた大木の幹の木肌に種子が根付いて、元の木から水分の供給を受けて、立派な成木として成長を遂げる、自然界の姿をいう。
北海道に生えているアカエゾマツの場合、老木の倒れた上に、「一列にアカエゾマツが育っている」と言う。種の特続である。企業の生命に置き換えてみると、企業を担う個体は消えていくが、精神は引き継がれていく ―ということである。精神とは、経営理念のことである。経営理念の確立によって、人が育つと言える。
創業50年にして、先行きに暗雲が色濃く立ち込めているA社。2代目夫婦は決意した。とにかく続けよう。わたしらの代で終わりでは、申し訳ない。企業の変革にチャレンジして、倒木更新を成し遂げよう。そこで経営理念を明確化し、人材育成の風土づくりに取り組むこととした。夫婦でじっくりと話し合った。
「お父さんは今まで、どんなつもりで経営をしていたの」
「それは、お得意先に尽くしたい ―ということかな。今まで、あらためて考えたことはないけれど“荷主第一”が根本かな。それより、お母さんはどんなつもりでわしに付いてきたのか」
「家業ですからね。付いていくしかなかったのよ。わたしらの代でつぶしたくない、という気持ちが強いわね。家業がつぶれたら夜逃げするしかないし、“家庭平和”のためにも頑張ってきたということよ」
「なるほど、家庭平和か。今まで、本当にありがとう。感謝しているよ。オヤジから引き継いだ運送業、この仕事は、社会の役に立っている。運送屋がいなければ、運ぶ人がいなくなる。社会の役に立っている。“社会貢献”しているわけだ」
夫婦でじっくりと話し合って、経営理念として3つの誓いを立てた。荷主第一、家庭平和、社会貢献 ―の3つである。そして“可能性にチャレンジしよう”とのスローガンを掲げた。ダメだダメだと思うよりも、生き抜くのだ ―との強い思いをもって“可能性にチャレンジすること”だと、姿勢をシャキッとさせた。
つづく
- 最近の投稿
- アーカイブ
-
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
- カテゴリー