[2019/4/22]二代目、壁にぶつかる
4月22日(月)
生きつづける精神― 事例A
(1)二代目、壁にぶつかる
A社は創業50年、2代目が社業を切り盛りしている。コツコツとした歩みである。
2代目は大学を出てすぐさま、オヤジの意向で家業の運送業の道に入る。オヤジはリヤカーを引っ張りながら徐々にトラックを所有していき、息子である2代目が入社した時には、7台という陣容であった。大学は出たけれど、汗まみれで働く。必死の日々。
10年も経つと、いつしか25台の陣容となる。ここからジグザグの日々。増えたり減ったりしながら、大体25台前後で推移して、かれこれ20年経つ。ここからが伸びない。原因は人である。人が育たないのである。
配車と事務関係は、2代目と奥さんの二人三脚である。他人はいない。乗務員が急に休んだりすると、2代目が走る。事務所では奥さん1人が留守番する。ここらぐらいが成長の限界。ところが、ふと気付くと、トップである自分も58歳、奥さんも58歳。これから会社をどうしていくか。後継すべき人材が、だれもいない。自らの年齢が深まるにつれて、会社もそれまでか。
2代目夫婦には、娘が2人いるのみ。娘婿はいずれも、固い職業のサラリーマンである。それとなく今でも誘いを掛けてはいるが、色よい返事はない。奥さんにしても、こんなしんどい仕事は、娘や娘婿には、心情として継いでほしくないと思っている。25台の車を動かしているので、事務所にはいつも、夜の9、10時まで明かりをつけて、奥さんが残っている。たまには社長も残っている。究極の少数精鋭体制である。それでもここ3、4年、収支はトントン。いわば、赤字スレスレである。
資金繰りは苦しい。車の支払いが、重圧となっている。社会保険料の支払いも滞りがちである。25人の乗務員のうち、60代が10人と、老齢化も進んでいる。会社の先行きには、暗雲が立ち込めている。人が育っていないのが、暗雲の根本にある。さて、どうするか。
こうした事例は、中小運送業にとっては、よくあることである。家業としての運送業。心と体を粉にして働いて、ふと気付くと、後継者がいない。先のことより、今日一日が大事で、日々必死になって時を重ねてこのざま。そろそろ60歳も近付くし、「楽をしたい」と思っても、ままならない。行くところまで行くしかない。行き着いた果てには、何があるのか。
つづく
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