ここぞという時の交渉に臨むにあたっての心構えとは何か。例えば従業員に解雇を言い渡す時の交渉はどうするか。ここに至るまでには、経営者にとってはそれなりの深い理由がある。ところが、いざとなると経営者は悩むものである。「労働基準監督署に駆け込まれたらどうしようか」、「彼をクビにして仕事に支障が出ないだろうか」、色々な悩みが湧いてくる。交渉のポイントは、経営者の決断の重さである。ここぞという時は法律がどうのこうのというよりも、「何故彼をクビにしなければならないか」という正当性である。経営者としての正当性である。真摯に向き合うことである。ここで逃げるとろくなことはない。腰が引けるとこの瞬間、経営者にとってはここぞという時、弱いままになってしまう。人間は嫌なことからは逃げたいものである。そこで踏み止まっていけるかどうかが、経営者には問われてくる。
経営者という仕事は、人間修業である。思うようにならないこともある。ここで挫けたりすると前に進まない。諦めるとそれまでである。なんとしても、思うようにならないことを実現してみせるとの強い心がいる。心に問う、「自分は正しいことをしているか」。正当性の確認である。正しいこととは、企業を存続させること、成長させることである。更に世間様のお役に立つことをしているとの確信である。こうした考えをベースとして「彼をクビにすることは正しいことかどうか」自問自答する。イエスとなると信念をもって実行する。こうしたプロセスひとつ、ひとつが経営者を鍛えていく。正に人間修業である。突き詰めて言えば全ての責任は経営者にある。クビにしなければならない社員を発生させたのも、経営者の責任である。日々自省し悩む。「これでいいのだろうか」。
経営者という仕事は辛いものである。楽することはあまりない。人間修業の日々の連続である。