去年の12月に突然、私は労働審判で訴えられた。私が社長をしている名古屋の運送会社の元社員からである。「自分は名ばかりの管理者であったので、時間外手当を払え」、「自分は会社を辞めるに際して、社長からパワハラを受けたので、損害賠償金を支払え」総計520万円の請求である。労働審判そのものは、平成22年1月26日10万円で和解した。確認事項は「時間外手当を払う必要のないこと」、「パワハラもないこと」でいわば実質上の全面勝利である。
「嬉しいか」と問われると正直言って反省することがある。そもそも元社員から訴えられるというのは反省である。元社員の怒りを買うことが、1対1の話合いの場で解決できず、法的手段になることそのものが反省である。常日頃からしっかりしたコミュニケーションをしていたか、NOである。経営コンサルタントとして全国あちこち飛び回っている。名古屋の運送会社には、月に3~4回しか顔を出していない。十分に腹割ってコミュニケーションを取れていなかった。たとえ月3~4回でも、真摯に元社員に直面していたか。真摯にキッチリと自分の考えを伝えていれば、このようなことにならなかったのではないか。法的手段に訴えられるということは、もちろん金もあるが怒りがないと、なかなか踏み切れるものではない。私としては元社員がそこまで怒りを持っていたとは、つゆにも思わなかった。経営者としての私の指導力の未熟さを反省する。
人の心はなかなかわからない。まさかと思うことも多い。私は労働審判で元社員に訴えられたとき「裏切りにあった」と愕然とした。しかしよくよく考えると、経営者としてはまだまだ未熟である。経営コンサルタントとしては面目を保った。実質、全面勝利であるからだ。しかし「嬉しいか」と問われると微妙である。嬉しいことは嬉しいが、反省することもあるからだ。今回の労働審判は、経営者のあるべき姿に想いを馳せることができた。その意味でも貴重な経験であった。