vol.58

人生に「もし」はない。「もし」あの時こうしていればと後から振り返っても遅い。時は過ぎ去っている。後悔してもあとの祭りである。

人生は不思議である。運と出会いによって人生は創られているのではあるまいか。計算し尽くすことはできない。人生のプロセスでは、予期せぬことや思いもかけないピンチに遭遇する。

そもそも、筆者がまがりなりにも経営コンサルタントとして自立できている秘密は何か。正直に言えば運としか言いようがない。大学を卒業した時は、まさか経営コンサルタントで身を立てようとは夢にも思わなかった。できたら社長になりたいとは思っていた。しかし本音は、人並みに生活できたらいい位のレベルであった。

ところが、現在は経営コンサルタントとして活動している。省みて人より特段すぐれていたり、知識量で圧倒しているわけではない。更に正直に言えば、大学を卒業して就職した時、深い考え、志を持っていたわけではない。現今の就職活動のレベルからするとお恥ずかしい。大学の就職掲示板に張り出されている会社を見て「自分でも採用してくれそうな所は何か」とパッと見て選んだものである。何者かに成りたいとは、その時は思わなかった。ただ生き抜くこと、平々凡々としていくことが筆者の願いであった。

従って一番最初に採用してくれた会社に喜んで入社したものである。入社した会社で「社長」になるのは難しいと悟った時、そこで初めて何者かになるにはどうするかと自己に問いかけた。「もし」はないけれど、あのまま会社に留まっていたらどうなっていただろうか。

確実に言えることは、経営コンサルタントにはなっていなかった。そのことが人生にとって良いかどうかはまだ分からない。

秋が深まってくると平家物語の「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし たけき者もつひには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ」が頭をよぎる。命の尽きるまで、何者かに成らんとして努力し続けることが人生というものである。運の力は努力によって掴み取ることができると信じるものである。