vol.54

リスクを取らないことこそ、リスクである。危ないことや、ひょっとしてニッチもサッチもいかないことに直面するかもしれない。リスクである。そこで逃げ回ったり、グズグズしてチャンスを逃してしまうかもしれない。「ナニクソ」あるいは「やるしかない」と一歩踏み出すことが、ここぞという時、人生の一瞬として求められている。決断を迫られる一瞬である。

私は、大学を卒業して民間会社に就職した。そこで、給与計算係として社会人の一歩を踏み出した。約1,000人の社員の給与計算である。事務のセンスがあるわけでもない。そもそも、そろばんにすら触ったこともない。当時はパソコンもない。思い起こせば、35年以上も前のことである。入社してすぐさま逃げ出すわけにもいかない。ひたすらモクモクと取組んだ。何とか1年くらいで1,000人の給与計算を担当することが出来た。

慣れない給与計算で夜中の1時、2時まで机にしがみついたこともある。1年もしてようやく慣れ、そういうハードなことも無くなったものである。あの時、へこたれて会社を辞めてしまったらどうなっていたか。今にして思えば、なんとか辞めずに踏みとどまってよかったと実感する。

大学を卒業した時は、将来の希望は「社長になる」ということであった。新入社員のメッセージとして社内報に発表したものである。ところが、社長どころか給与計算係である。希望と現実の落差は大きい。「このまま単なる給与計算係で一生を終えてはならない」と社会保険労務士の勉強を始めた。資格取得のめどがついた時、私にとって人生の一瞬が訪れた。このまま会社に残るか、それとも新天地に踏み出すか。新天地とは、経営コンサルタントの道である。安定したサラリーマン生活からの決別の瞬間である。リスクに直面したわけである。34歳の時、今にして思えば、今日に連なる経営コンサルタントの道に転進した。リスクを賭けた人生の一瞬であった。