vol.53

「最初の一歩」ということがある。何かをスタートしようとする際の「最初の一歩」である。心の中であれもやりたい、これもやりたいと思い悩んで、フンギリがつかない。これから先の行く末を心配して躊躇する。そこで一歩を踏むために勇気を奮い起していく。

「あすなろの木」というのがある。明日こそやろうと思って、終りに何事も成し遂げられなかったことを「あすなろの木」という。成すことなく終わる。見果てぬ夢みたいなものである。

思いおこせば私自身は、何をやろうとして「最初の一歩」を踏んだのであろうか。一言でいえば、経営コンサルタントの道ということになる。ところが私の場合、色々悩んだり迷ったりすることはなかった。気が付いてみれば経営コンサルタントの道を歩んでいたことになる。途中で引き返そうとは思わなかった。正確にいえば、途中で引き返す余裕がなかった。ひたすら前へ進むことしか考えていなかった。私の基本は“生き抜く”ことにある。必死になって生き抜くことに全力を尽くすことである。「最初の一歩」から3年ぐらい経って、あるクライアントの経営者から<経営コンサルタント>として社員に紹介された。その際、「なるほど、私のような仕事をコンサルタントというのか」と自覚したわけである。それからどのような仕事をするのか、どのような役割があるのか、自分自身文献を調べたり、資格(中小企業診断士)を取得したわけである。果たして、社会に評価される仕事を続けてきただろうか。それなりに必死で活動してきたに過ぎないかもしれない。振り返れば「あすなろの木」かもしれない。いつしか世のため、人のために尽くしたいと思っても「あすなろの木」かもしれない。

私も今年は還暦を迎える。人生がぐるっと一回りしたわけである。新たに「最初の一歩」を踏むことになる。生涯現役の経営コンサルタントとしての一歩である。一方、心の中の「あすなろの木」もあるかもしれない。いずれにしても“生き抜くために前へ”がただいまの心境である。