vol.43

「楽しては勝てない」とはスポーツの世界のことばかりではない。オリンピックに出場する短距離100mの日本人選手の努力をたまたまテレビで見た。年令は36才、1/100秒の壁に挑戦している。体のバランスをよくする為に、左利きでもないのに左手で食事をしている。瞬発力をつける為に100kgのバーベルを上げるトレーニングを積んでいる。1/100秒の闘いを日々全力でかけ抜けている。「楽しては勝てない」とつくづく悟らさせる。ちょっとの油断やおごりによって一敗地にまみれる。企業経営者はここぞという時は楽してはいない。よく死ぬ思い、生か死かというけれど正に賭けている。この真剣さ、迫力、捨て身を優良な経営者はオーラの如く身に付けている。筆者は経営コンサルタントとして、間近でそうした経営者の捨て身の迫力に直面させられる。80才に近い創業経営者の企業で労働組合が結成される。2代目である55才の息子は青くなる。成すすべを知らない。団体交渉の席からも逃げていく。弁護士任せとする。ところが創業者が立ち向かっていく。年令は80才に近く、しかもガンを患っている。入院先のベットから団体交渉の席にかけつける。「できないものはできない」と労働組合の要求をはねつける。いよいよ緊迫してストをするかどうかの瀬戸際まで追い込まれる。「このままでは荷主の所に赤旗を持ってかけつけますよ」すさまじい労働組合の恫喝が襲ってくる。一歩も引かずに創業者は対応する。“至誠は天に通ずる”ついにというか、労働組合が折れてきた。ギリギリの交渉の果てである。捨て身の迫力である。創業者は云う。「人生のうちには2~3回は、こうした土壇場がきますよ。土壇場で人間は磨かれていきますよ。土壇場で底力を発揮していくのが、経営者魂というものですよ」 “身を捨ててこそ浮かぶ瀬あれ”とはよく言ったものである。身を捨てるほどの覚悟が人生を切り開くこともある。土壇場の迫力が正にそうである。ハラをわって立ち向かう覚悟があれば至誠は必ず天に通じる。経営コンサルタントとしてのここぞという経営アドバイスに生かしていくことである。すなわち“身を捨ててこそ浮かぶ瀬あれ”である。